6月末に恒例の緑友会(大阪府立渋谷高等学校同窓会)が千里阪急ホテルで開かれました。
最初は創立100周年記念講演『アナウンサーは三日博士』。
『ちちんぷいぷい』や『ミヤネ屋』で知られる放送部出身の柏木宏之氏(毎日放送)の講演です。
会場のクリスタルホールに大勢の卒業生が集まりました。
私は席について、愛用のレポートパッドで時間を計りながら、速記の要領で内容を記録していくことにしました。
時々プレゼンテーションをすることがあるので、1時間で柏木氏が、どんな時間配分で何を話すのか参考にしたかったのです。
最初の5分で自己紹介。
渋谷高校が池田市立だった時の先生や修学旅行の思い出を語り、聴衆をひきつけます。
次の5分で卒業後、毎日放送で新人アナウンサーとして苦労した話。
西川のりおや笑福亭鶴瓶など関西人にはなじみぶかい芸能人や『あまからアベニュー』『アップダウンクイズ』『ヤングタウン』『ワイドユー』など昭和50年代の懐かしい番組の名前を挙げ、親しみを誘います。
そして、本題の『アナウンサーは三日博士』。「何も知らないことでも3日で博士になれる」と事前調査の大切さを強調。
「若い世代には取材とロケの違いがわかっていない」と嘆きました。
放送の世界での「取材」とは「自分が準備して現場で感じ取ったことを、ディレクターが編集すること」。
「ロケ」とは「ディレクターが調べて書いた台本を、現場の人が台本通りに演じること」。
なるほど。これは私も区別がついていませんでしたが、最近のテレビやラジオで行われているのは「取材」じゃなくて、「ロケ」なんですね。
ここまでで20分。
そして、テロップを使った漢字の読み方クイズ。
「捏場(こねば)」「海月(くらげ)」「水母(くらげ)」「案山子(かかし)」「雪隠(せっちん)」「氏子(うじこ)」「転寝(うたたね)」
……意外に読めそうで読めない漢字が出題されました。
ラジオで葉書をくれた人の名前「金田裕子さん」を「かねたゆうこさん」と呼んでいいのか「きんだひろこさん」と呼んでいいのか悩んだところ、結局「かねだゆうじさん」という男性だったオチのある話で会場をわかせます。
ここで35分経過。
「なぜ漢字が読めないか」に話題は移りました。
「中国は王朝が変わるたびに文字の読み方が変わりますが、日本では伝わった当時の音が残るため、一つの文字に複数の読み方があります」
例えば「明」という一文字に呉音読み(仏教伝来の頃の読み方)の「みょう」。漢音読み(奈良時代)の「めい」。唐音読み(奈良時代以降)の「みん」の3通りがあります。
「例えば「日本」にも「ひのかた」「ひのもと」「にほん」「にっぽん」の4通りがありますが、一番古いのは4つのうちどれでしょうか?」
聴衆の中で声を出して答える人は誰もいません。
……いや、「日本」より古い時代になると「倭(やまと)」のはずだったけど。
「答えは「おおやまと」。「日本」と書いて「おおやまと」。701年の大宝律令で「日本」の記述が出てきます」
……やれやれ。うかつに答えなくてよかった。
「とにかく調べて調べて、わかるまで調べる。アナウンサーには必要なことです。これからは外国人がたくさん日本に来ますから、地元のことは知っている方がいいです。例えば『信長公記』の『池田城の焼き討ち』。地形は変わらないので、外国の人に聞かれたら答えられるように。……還暦になったら何をしようか楽しみです」
いい締めくくりです。
ここで50分。
最後の10分が質疑応答。
素朴な疑問に気さくに答え、時間通りに講演は終わりました。
さすがプロのアナウンサー。時間配分、構成とも完璧でした。
「調べて調べて、わかるまで調べる」……文章を書く者として、とても大切なことを学ぶことができました。
この出会いに心から感謝しています。
そして、別室に設けられた宴席で、総会と懇親会。
いつも通り柔道部顧問のギターを伴奏に校歌を斉唱して、校長や来賓の池田市長のあいさつがありました。
100周年を機に学校の設備をリニューアルするとのこと。
天体ドーム、トレーニングルーム、プールサイド、視聴覚室の設備費用にあてるための寄付金を募っています。詳しいことは学校へお問い合わせください。
そして、いつも通りの食べ放題や飲み放題の宴会。
米や酒や雑貨やクオカードが当たるお楽しみ抽選会や、名誉会長の一本締め。
見事なほど「いつも通り」の緑友会でした。
せっかくの100周年なので「100イヤーズアニバーサリー!レッツパーティー!」のようなお祝いムードを、ちょっとだけ期待していたのですが。
その「いつも通り」が渋谷高校らしいといえば渋谷高校らしい。
そして、100周年を越え、101周年、102周年と、これからも歴史を重ねてゆくことでしょう。
大阪府立渋谷高等学校創立100周年。
本当におめでとうございます。
ラベル:日本