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2018年03月02日

『お殿様、外交官になる』

蜂須賀茂韶、鍋島直大、浅野長勲…… 
いわゆる「幕末のお殿様たち」である。

外交官といえば「難しい試験を何度も受かった人」のイメージが強いが、明治初期の外交官には特別な資格試験がなかった。
当時の外交官の任務は、現地の留学生の世話や「お雇い外国人」の招聘、社交活動を通した日本と日本人の広報だったので、それでもよかったらしい。
しかし、明治維新に貢献した藩の「お殿様」だからといって、留学も外交も経験のないお方を外交官にするというのは、あまりにも大雑把すぎる人事じゃないか。

実は、この人事には裏がある。
外交には金がかかるが、政府が支給する金額では足りなかった。
そこで政府が目をつけたのは、明治維新後、江戸に広大な屋敷と土地を持ち、その賃料で潤沢な資金を得ていた家族(旧大名)だった。
しかし、「お金持ちだから外交官に」というのも変だ。

この本の著者は、世界各地に渡航した人の足跡や、江戸・明治創業の商店の来歴などを追っている人で、豊富な資料を駆使して「お殿様外交官」の素顔に迫っている。

意外なことに、海外に赴任した「お殿様」は、それなりに現地で活躍している。
夫婦で鹿鳴館外交を推進した鍋島直大。
フランスでの公務中に侯爵に任命され、文部大臣にまで出世する蜂須賀茂韶。
イギリス赴任から戻って司法大臣に出世した岡部長職。

その活躍の陰には、社交界で華やかなダンスと英語を披露し、不器用な「お殿様」を支える「お姫様」の力があった。
一見「大雑把な人事」だったが、それはそれで正解だったのかもしれない。

ちなみに、この本に登場する7人の「お殿様」の中で一番気になるのは榎本武揚。
旧幕臣で徳川海軍を率いる「朝敵」から一転、特命全権公使としてロシアに赴任し、樺太半島と千島列島の国境策定のような重要な仕事をしている。
「外交官・榎本武揚の決断」みたいな本が1冊できそう充実したな内容だ。

激変する時代の中で必死に生きた「お殿様とお姫様」。
その姿は鮮烈だった。

『お殿様、外交官になる』 熊田忠雄 祥伝社新書
ラベル:殿様 江戸 明治 外交
posted by ゆか at 23:11| Comment(0) | 本読みコラム | 更新情報をチェックする
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