実際はどうだったのか……。
著者は日本近世史が専門の東京大学名誉教授。
ほとんど字ばかりの大変密度の濃い内容なので、レポート用紙に図を描きながら読み進める。
幕府の財政、農政、交通、司法を扱う役所で強力な権限を持っていた勘定奉行。
昇進制度は実力主義的で、大名から身分の低い御家人まで、さまざまな人が勘定奉行になっている。
江戸時代が好きな人にとっては面白い内容で、特に江戸中期の「幕府財政の悪化と貨幣の改鋳問題」に多くのページが割かれている。
簡単に解説すると、江戸時代、幕府が貨幣発行権を独占していたが、日本各地で流通していた貨幣を統一せず、そのままの形で金・銀・銭(銅)の「三貨制度」を制定した。
金はお金の枚数で交換する「計数貨幣」。
銀は重さを量って交換する「秤量貨幣」。
銭は1000枚で1貫文、4000貫文で小判1両だ。
「江戸の金遣い・上方の銀遣い」……東日本では金が多く流通し、西日本では銀が多く流通していたため、10円は全国どこでも10円の価値がある現在の管理通貨制度とは違い、毎日金と銀の交換割合が変動する。
これは為替相場をイメージした方がわかりやすい。
江戸中期、金の産出量の減少や財政難補填のため、幕府は金の含有率を減らして小判を発行した。
ところが、貨幣は重さを量られて流通しているので、貨幣の価値が下がって物価が上がる。
幕府は物価を抑えるために苦しみ、再び改鋳する悪循環に陥った。
では、幕府財政が破綻する幕末の勘定奉行は……
わくわくしながらページをめくると……
慶応3年(1867年・大政奉還の年)の政策、江戸・上方の豪商への御用金と幕府領民への献納金の差し出令、金札(紙幣)の発行に軽くふれている程度で、がっかりした。
しかし、幕府の破綻と勘定奉行の動きだけで、本が丸ごと1冊できそうな感じだ。
次回、図解満載の続編『幕末の勘定奉行』が発行されることを期待したい。
『勘定奉行の江戸時代』 藤田 覚 著 ちくま新書
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