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2019年03月01日

2019年の日本古武道演武大会(後編) 世代交代

日本古武道演武大会は、日本各地から集まった37流派が20分の休憩をはさんで、朝から夕方まで演武し続けるという「古武道観覧マラソン」。一つの流派が演武を終えて退場すると同時に次の流派が入場するので、観客も席を外すのが難しい。

「ねえ、お腹すいた」

後ろの席には古武道を見に来た若いカップルがいるようですが……女性は古武道に今一つ興味がないようで、動きが落ち着かない。
日本古武道演武大会はデートコースとしては、ちょっと難ありなのかもしれません。

「古武道の演武は真剣や火薬が使われる。木刀も間合いが間違ったら大けがをする。演武者は命がけで演武してるねんから、見る方も真剣に見るのが演武者への礼儀や」

私は夫から聞いた「古武道演武鑑賞の心得」を、そのまま今も守っています。

後半の演武のトップバッターは「沖縄剛柔流武術」。
上半身裸の演武者が登場。
筋骨隆々の高齢者。
相手が体を叩くのですが体はびくともしない。
「百翠蓮(ペッチューリン)」と呼ばれる型の効力です。

洗練された動きの「澁川一流柔術」は、会場のどの方向からでもきれいに写真を撮れるように演武の組み立てを配慮。
赤い鎧武者姿の演武者が、十字槍を豪快に振り回す「佐分利流槍術」。
正座した状態から一瞬で垂直に飛び上がり、相手を斬りつける「天真正伝香取神宮流剣術」。
一糸乱れぬ抜群のチームワークを見せる「伯耆流居合術」。

今年の演武の写真は、武道をしている人が「これだ!」と喜ぶ写真を撮るように心がけました。
初心者と武道家の「すごい」と思うところは、ちょっと違います。
素人目に「すごい」と思う写真は、刀を打ち合わせて止まっている動きですが、武道家が「これだ!」と思う写真は、攻撃や防御に移る寸前の動きや、複雑な間合いの駆け引き。
攻撃や防御の動きの前に足の運びに変化が出ますから、それに注目してシャッターを切ると、初心者でも「かっこいい古武道」の写真が撮りやすいです。

演武者の足さばきに注意しながら「攻撃をしかける一瞬の緊迫感」を表現する写真を撮ろうとがんばりましたが、カメラのバッテリー不調で、途中からiPhoneカメラに頼るはめになりました。

「合気」を使って、女性が軽々と大きな男性を持ち上げてしまう「大東流合気柔術」は、畳の上を滑るような美しい膝行を見せます。
「奥女中の武芸」として有名な「楊心流薙刀術」は、振袖たすき掛けの女性が美しい陣形を作る華麗な演武。
静かな動きで、たまに木刀の打ち合う音が聞こえる「溝口派一刀流剣術」。

「ちょっと疲れたからストレッチしてくる」

武道館の観客席は静かで、シャッター音だけが響き渡る中、女性の大声が響きます。
『私語厳禁!』の貼り紙が貼られているわけでもないのに、誰もしゃべらないのは、演武者の集中を乱さないためですが、今年は演武中に「腰痛い」とか「後でメールしよう」とか、大声でしゃべる人たちがいます。
「せっかく稽古の参考にしようと動画を撮ったのに。わけわかんない女の声入った。演武者の気合いが聞こえない。あーあー」と思っている観客も、さぞや多かったのではないでしょうか。

演武はまだまだ続きます。
日本古武道演武大会は、35流派が持ち時間7分を使って、さまざまな演武を見せるもの。
演武する方も見る方も真剣なのですよ。

杖を水平に持つ独特の構えと激しい打ち合いが特徴の「無比無敵流杖術」。
「天神真楊流柔術」の演武は、座り技主体の演武だった「大東流合気柔術」とは対照的に、立ち技主体の構成で、合気道の呼吸投げに似た技も披露。

ここで、とうとうカメラの電源が故障しiPhoneで撮影続行。
本当は一眼レフのカメラを買った方がいいのでしょうが、高いカメラで演武を撮って壊れるのも抵抗があります。
レンタルサービスにするか、カメラに保険をかけるかは悩ましいところ。
来年は、もうちょっとよいカメラを使いましょうか。

「無雙直傳英信流居合術」は「インスタ映え」を意識したうまい演出。
剣のほかに、箒、櫂、鳥刺し棒など日常にあるものを巧みに武器として使う「琉球王家秘伝本部御殿手」。
「天然理心流剣術」は女性演武者の座技による関節技が印象に残りました。
剣術にも素手で敵を封じる技があり、柔術にも剣を使う技が伝わっているのですよ。

玄人好みの渋い演武の「田宮流居合術」。
「荒木流拳法」は鎖鎌や乳切木、棒など武器術の扱いが見事。
「北辰一刀流剣術」は手に「鬼籠手」と呼ばれる防具をつけ、本気で打ち合っていますが、木刀はまともに当たれば骨折するので、かなり危険な演武です。

そして最も危険な演武納め。
「陽流砲術」は実物の火薬を使います。
大きな的が用意され、的がある西南観覧席の人は退去。火薬の暴発に備えて消火器を持ったスタッフが待機します。
白煙と火花、号砲が場内に鳴り響き、一瞬の沈黙の後、拍手がわき起こります。

鳴りやまぬ拍手の中、「閉会宣言」が出され、今年の日本古武道演武大会も無事終了。
皆様お疲れさまでした。

今年の演武大会のテーマは「世代交代」「高齢化社会の古武道」「活躍する外国人」でした。
宗家が控えめに、若者が大胆に演武する流派が多かった半面、空手の系統の古武道は「年をとっても元気」をアピールしていました。
外国人演武者も大活躍。
パンフレットに演武者の名前があるので、そのデータを元に計算すると、223人中13人が外国人演武者で、全体の5.8%。
今後、その比率は増えていくでしょう。

日本武道館は来年の東京オリンピック会場の一つで、これからバリアフリー工事が行われるため、しばらく閉鎖されます。
来年の日本古武道演武大会は、綾瀬市の東京武道館で開かれるそうですが、どんなところか見当がつきません。
行くのが楽しみです。
posted by ゆか at 22:54| Comment(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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