今回は東京の亀戸香取神社の古武道奉納演武。
亀戸香取神社は、平安時代半ばの平将門の乱の時に、俵藤太秀郷が戦勝を祈願した神社。
現在では「スポーツ振興の神」として、崇敬を集め、毎年古武道の奉納演武が行われています。
今回演武する流派は、居合が主体の「土佐英信流」と「柳心照智流」、総合武術の「双水執流清漣館」と「竹内流備中伝」。
どれも初めて見る流派です。
……それにしても、どう位置取りしたものか。
神社の境内を歩きながら私は考えこみました。
野外での古武道演武観覧は、姫路城、大阪の住吉大社に続いて3回目ですが、ここの神社の境内は起伏が激しい地形。
演武場の三方を囲むように設けられた観覧席。
布と木枠を使った簡易折りたたみ椅子が舞台の周りを取り巻いています。
『非営利活動法人古武道奉納演武』と書かれた看板の正面が一番いい席。
演武場の間近に陣取ってもいいのですが、椅子に座ったまま写真を撮ると、間近で演武する方の写真しか撮れなくなって、演武全体の様子が撮影できない。
しかも古流の皆さんは唐突に「跳ぶ」。
この「跳ぶ」は、相手が足に斬りつけてきた時に、垂直に高く跳び上がり刀をよける技。
古武道では頻繁に出てくる動きですが、あまり頻繁に跳び上がられると「足だけが写った写真ばかり」という悲惨なことに。
古武道の演武は動きが予測できないため、被写体の中でも難易度の高い代物です。
例えば、日本武道館で開催される日本古武道演武大会の時には、必ず演武プログラムが販売されます。
各団体が演武する技の解説が載っているのですが、その中で「敵の隙をつき」とか「意表をつき」とか「注意をそらす」とか「○○と見せかけて」というような言葉がやたらに出てきます。
「敵の裏をかく」ための技だから、当然撮影者も裏をかかれてしまうんです。
私も撮影中に何度「まさかそうくるか!」と思ったことでしょう。
もっとも、予測のつかない動きを見るところが、古武道演武観覧の面白さでもあるんですが。
どこに陣取るか悩んだ末、観覧席後方から、演武全体を見渡せるようにしておいて、必要に応じてズーム撮影もすることにしました。
観覧席後方の傾斜地には欅が生えていて、木陰になるのはありがたいのですが、欅の周りの石垣は組み方が不安定でグラグラしている。
では、ここでカメラを構えてみましょう。
IT Media Newsの『デジタル一眼レフのブレない構え方』という記事によると……
カメラは右手でグリップを握り、人差し指をシャッターボタンに添える。
左手はズームリングに指をあてる。
腕のブレを押さえるために、脇を締めて両腕を体に固定。
肩幅程度に足を開き、重心バランスが取れて安定させる。
傾斜のある不安定な石垣の上でバランスを取って立ち、500グラムのカメラを構えたまま2時間、その体勢を保つ……これはきつい。
日頃使わない腕の筋肉を使うから、翌日筋肉痛起こしそうだ。
こうなると「よい写真を撮るためには、まず腕力だ!腕立て伏せ100回!」みたいな話になってきます。
難儀やなあ。
古武道奉納演武は10時30分スタートで、各流派持ち時間20分。
日本古武道演武大会の各流派の持ち時間が7分ということから考えると、かなり時間に余裕があります。
みんな初めて見る流派だけど、どんな見せ方をするのか。
演武者の中にFacebookでおなじみの人もおられますが、いったいどんな演武をするのか。
わくわくしながら、演武の始まりを待っていました。
……次回につづく……
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