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2019年05月17日

古武道演武(後編)見せると隠す

2019年4月29日、東京。くもり、予想最高気温19度。降水確率30%。
紫外線対策と雨と両方の準備をして出かけました。
演武全体が見渡せるように演武場の正面後方に陣取りましたが……斜面で足元が不安定な石組みの上で、立ったまま2時間カメラを構える、という過酷な環境で撮影することになりました。


外国人旅行者らしき男性が、かなり足の長い三脚を組み立てて、カメラを固定して、少し離れたところの席に座りました。
2時間を動画で撮るつもりなんでしょう。。
その方が楽で賢い。
ただし、カメラを固定すると、動く範囲が広い古武道は、フレームからはみだして演武することも多々あり、「写ってない時」があります。

「西日本古武道大会」では、専門のカメラマンがいて、キャスター付きの三脚で床を滑るように移動しながら、演武者に近づいたり離れたりして撮影していました。
古武道は刀や槍、弓、棒、薙刀、杖、手裏剣、鎖鎌など、さまざまな武器を使い、「突然走り出す」「唐突に跳び上がる」などの変則的な動きもするので、それを熟知している人でないと難しいんです。

今回は「一眼レフカメラを使って古武道を撮ってみる」がテーマなので、レンタルしたカメラ(Canon Eos Kiss)を使いこなせるのかが問題。
付属の取り扱い説明書によると、オートフォーカスでカメラが自動的に明るさや最適なタイミングを判断するらしい。
ここはカメラのお手並み拝見というところですか。

奉納演武をするのは4つの流派「土佐英信流」「柳心照智流」「双水執流清漣館」「竹内流備中伝」。
各流派持ち時間20分程度で、午前と午後、2回開催。

まず、「土佐英信流」。
「無雙直伝英信流居合術」の系統の流派です。
「土佐」とついているのは英信流が土佐藩御留流(門外不出)だったことと関係しているのでしょう。
「土佐英信流」は「剛毅朴訥」な感じがして、いかにも「土佐の居合」らしいものを見ることができました。

この奉納演武ではマイクを持った演武者が技の解説。
配布(販売)資料なし。
毎年出かける日本武道館の「日本古武道演武大会」では、全国35流派が持ち時間7分で演武するため、時間の都合で礼法や技の名前は省略。
演武のコンパクトさを充実した大会プログラム(有料)が補うという形に慣れていたので、これはちょっと失敗。
写真より動画の方がよかったかも。
演武がノンストップで続いてるから、途中で動画モードに切り替える余裕がない。
あとでサイトを見て解説を確認しよう。

続く「柳心照智流(りゅうしんしょうちりゅう)正誠館」は、「稽古によって誠の人を育成して世の中に貢献する」哲学を持ち、ホームページも英語対応の流派。
居合のさまざまな型、木刀の組太刀を駆使した華麗な演武で観客を魅了します。

オートフォーカスでの撮影は、私がシャッターボタンを押すのと、カメラが自動でピントを合わせるのにタイムラグがあるので、「そろそろ見せ場を仕掛けてくるか」というタイミングでカメラを構え、写真を撮るベストなタイミングの0.2秒前に、シャッターボタンを押す。
私が構図とおおよそのタイミングを決め、カメラが判断して撮影する分業体制で撮影。
カメラが判断し損ねてシャッターがおりない時もあれば、シャッターボタンを1回押している最中に3回もストロボをたいたりする。大丈夫なんかね。このカメラは。……演武も解説も続いているので、写真が撮れているか確認する余裕もありません。

ふと、背後で人の気配がしたので、振り向くと、演武から抜け出してきたと思しき黒の紋付き袴姿の青年が、物言いたげな表情で立っていました。
Facebookで見覚えのある方です。
とりあえず会釈して撮影続行。
演武が終わったら、ゆっくりとお話ししましょう。

さて、演武の後半は「双水執流清漣館(そうすいしりゅうせいれんかん)」と「竹内流備中伝(たけのうちりゅうびっちゅうでん)」。
両流派とも日本最古の柔術「竹内流柔術腰之廻小具足(たけのうちりゅうじゅうじゅつこしのまわりこぐそく)」の系統の総合武道です。

「双水執流清漣館」は剛直な組み討ちの技、居合いの演武などをわかりやすい解説をまじえながら展開。
最後は護身術の体験参加。
観覧席から若い女性が1人立候補。壇上に上がり、臼木良彦宗隆師範の指導で簡単な護身術に挑戦。
見事に門下の男性を関節技でとりおさえ、観覧席から拍手が巻き起こりました。

全然武道のことを知らない若い女性でも、コツをつかんだら、体格の大きな男性をいともたやすく制することができる。
レクチャーがよいからなのでしょう。
体験参加は観客と演武者の距離が近い奉納演武ならではの光景かもしれません。

最後が「竹内流備中伝」。
今回の奉納演武に誘ってくださった方がおられる流派です。

太い真棒を振ることで体を鍛え、剣の技を磨く。
BS11放映『歴史科学捜査班』、「長谷川鬼平」がテーマになった回で、高城人継師範が十手術について解説されていたのを拝見しましたが、この流派は総合武術なので、刀、棒、杖、短刀、薙刀と使う武器も多彩です。
演武場前方と後方で全然違う技が展開されていて、どちらにピントを合わせるか迷うほど完成度の高い動き。
豪快な投げ技は、やはり竹内流の系譜。

演武の迫力に圧倒されっぱなしの2時間でした。
やっぱり古武道はすごい。

もちろんこれは一般人や他流派の人に興味を持ってもらうための「見せるための技」。
相手だけではなく、自分にも大きなダメージがあるので、きちんと稽古を続けて技を極めた人でないと、危険で伝えることのできない「見せない技」が、どの流派にもあると思います。
しかし、よい演武をたくさん見ることができました。

今回は「一眼レフカメラで写真を撮る」がテーマの古武道観覧で、鮮明な写真がたくさん撮れました。
しかし、1100枚もの写真が撮れてしまい、今、整理に苦労しています。
撮影者の未熟を賢いカメラが補ってくれたので、よい写真が多くて、ボツにできなくて困っているところです。

しかし、懲りずにまた古武道の写真を撮りに行きます。
各流派の方、やたらに写真撮る怪しげな女性がいても、あんまり気にしないでください。
よろしくお願いします。
ラベル:武道 居合
posted by ゆか at 23:58| Comment(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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