「右足どうしたん」
「段差から落ちた」
「足がなんかなってるんとちゃうんか」
「いや、大丈夫や」
……なんか不吉だ。
夫の「大丈夫や」はあまりあてになりません。
「腹痛いけど大丈夫や」といって「実は盲腸」とか、大量の鼻血を出しながら「大丈夫や」と言ったりするから。
確かに空手4段剣道3段少林寺拳法3段大東流合気柔術2段柔道初段。
若い時は、かなり無茶な稽古をやったらしい。
「俺も昔は厳しい稽古したから、これくらいの痛みぐらい気合いで乗り越えたる」という気持ちはわからなくもないけど、体はいつまでも若いわけじゃないんですよ。
「大丈夫や」
そう言って、翌日出勤して……
「右足が痛くて歩けん」
「さっさと病院にいかんからや」
診断結果は……足の踵の骨にひびが入ってました。
全治3か月。自宅静養。
「骨折じゃないんか」
「骨折やったら歩かれへんわ」
「……いつまでも若いわけやないんやで。それにしても、よく今まで我慢してたな」
加齢による骨量の低下や骨粗しょう症のリスクは、どうしてもさけられない。
有酸素運動が骨量を増加させるらしいんですが。
……ランニングとかウォーキングとか水泳とか、あんまり好きじゃないしなあ。
夫は1か月家で安静にした後、足に装具をつけて、徐々に歩行訓練をしていくことになりました。
夫の足を採寸して作られたのは……
「靴底?」
「いや、これは装具や。これを履いて歩いたら足にかかる衝撃が減る」
「ギブスで固めて一気に治しゃいいのに」
「無茶言うな」
結局、夫は3か月で回復して職場復帰しましたが。いやあ。大変だった。
「武道家は不死身」みたいなイメージが強いですけど、実際の武道家はケガが多く、「膝が痛い」とか「腰が痛い」とか言いながらも、武道を続けてたりするんですね。
最近の武道関係の動画を見ていると、身体的に無茶な動きをする武道家が、案外たくさんいるので、ちょっと心配になったりします。
武道が隆興した江戸時代の人の平均寿命は30代半ば。
塚原卜伝(鹿島新当流)が89歳。柳生石舟斎(柳生新陰流)が78歳。
「剣豪」と呼ばれる人は意外に長寿ですが、普通に道場で稽古している人が、50代、60代に突入して、体力的にいつまで武道を続けられるのか……
自分のことも含めて、ちょっと見当がつかないなあ。
……次回に続く
【関連する記事】
- 令和5年の日本古武道演武大会(後編)続ける覚悟
- 令和5年の日本古武道演武大会(中編)遠い間合い
- 令和5年の日本古武道演武大会(前編)逡巡
- 武蔵の剣(後編)攻めの剣・守りの剣
- 武蔵の剣(前編)明鏡止水
- 令和4年の日本古武道演武大会(後編)一長一短
- 令和4年の日本古武道演武大会(中編)拍手
- 令和4年の日本古武道演武大会(前編)静寂
- 日本古武道演武大会の進化(特別編)前代未聞
- 異変(後編)忍び寄る影
- 異変(前編)凶兆
- 明鏡止水(後編)理合
- 明鏡止水(前編)起こり
- 続・袴考(後編) 進化
- 続・袴考(前編) 伝承
- 武道とリハビリ(後編)筋力
- 武道とリハビリ(前編)変化
- 距離感(後編) 拳の間合い
- 距離感(前編) 剣の間合い
- 令和二年の古武道演武大会(後編) 一人