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2020年02月14日

令和二年の古武道演武大会(前編) 支える皆さん

昨年末、日本武道館から日本古武道演武大会の招待状が届きました。
ところが……今年に入って、新型コロナウイルスによる肺炎が流行りだして、東京で患者がでました。
そんな時期に、わざわざ東京へ行くのもなあ……と一瞬迷った喘息持ちでしたが、結局出かけることに。

今年の会場は、東京オリンピックに備えて改装中の日本武道館ではなく東京武道館。
「日本古武道演武大会」が、日本武道館ではないところで開かれるのは異例なことです。

それにしても、東京武道館のある「綾瀬」って、どこにあるんだろう? 
羽田から遠かったら嫌だなあ。

スマホの「Googleマップ」アプリがなければ、東京の地理に疎い大阪者は、東京武道館にたどり着けなかったと思います。


東京メトロ千代田線綾瀬駅から5分ほど歩くと、菱形を連ねたモダンな建物がありました。
これが東京武道館。
東京藝術大学名誉教授で建築家の故・六角 鬼丈(ろっかく きじょう)氏がデザインした建物。
屋根のてっぺんに金色の擬宝珠がついた「お寺」を思わせる日本武道館とは全然違う。

全然違うといえば……そういう近代的なデザインの建物の玄関で「靴を脱いでお持ちください」とビニール袋を渡されるとは思わなかった。
いや、私の住む大阪豊中市にある武道館「ひびき」も土足厳禁になっているから、わからなくもないけれども。

「日本古武道演武大会」は観覧者も非常に多いので、一人一人にビニール袋を手渡していく日本武道館スタッフも大変です。

東京武道館の中に入ると、結構広い。
ナラの積層材でできた木質クッション床の広大な大武道場は、剣道や柔道など武道に使えるだけでなく、バレーボールやバドミントンにも対応していますが、この武道場は長方形。
私は一番よい写真が獲れる「正面」と呼ばれる来賓席の左手に陣取ったので、手前が剣術や槍や薙刀ができる床、奥は柔術ができるグリーンのマット。
日本武道館は正八角形なので、どこの方向からでも、それなりの写真が撮れるのですが、東京武道館は長方形で、手前の剣術は撮れても、奥の柔術は小さくなってしまうかもしれない。
天井からのライトは薄暗いし。

……うーむ。この慣れない環境で撮影できるかなあ。

慣れない……といえば、観覧席にいる顔ぶれも、いつもと違う。
いつもなら来ているはずの、武道マニアとおぼしき3、40代の人がいなくて、もっと年代層は上だけれども、あきらかに物腰が素人じゃない人たちばかりがいます。

「先生の演武は何番目?」とか「〇〇さんも出るらしい」という会話が、いたるところから聞こえるということは、ここにいるのは演武関係者ばかり?
演武といえば……
日本武道館が一日だけの「日本古武道演武大会」のために発行する、演武プログラム冊子を購入しました。1冊500円するけれども、これを買っておかないと、演武の順番や見どころがわからないんです。
ざっと目を通すと、
『今回は初めて東京武道館での開催となりますが、日本武道館と同じ気持ちで演武したいと思います』
とコメントしている流派もあって、演武者にとっても東京武道館は「なじみのないところ」だということがわかります。

……今回の演武は、ちょっとしんどいかもしれない。

とりあえず、カメラが動くか確認して、膝の上にレポートパッドを広げて、プログラムを見て、出場流派の数だけ紙に番号を振って……

「失礼ですが、ライターさんですか?」

突然、後ろから声をかけられました。
ふりむくと、「武人」の雰囲気を漂わせている70ぐらいの男性が立っていました。

「……武道のブログを書いている者です」
「ほう。わざわざ取材して?」
「ええ、趣味ですけど」
「ふうん。今日はどちらから?」
「大阪です。合気道初段なので古武道に興味がありまして」

彼の表情がゆるみました。

「合気道の大元は大東流だからね。僕は大東流なんだ」
「夫も大東流です」
「大阪の、ということは、琢磨会の?」
「ええ。でも、最近弱気になって、「俺も還暦やから」とか言うんですよね」
「……そりゃいかんねえ。「還暦はまだまだ若い。武道に関心を持ち続けてほしい」と、ご主人に伝えといてください」
「ありがとうございます」

彼はにこにこしながら去っていきました。
向かった先では何人かの若者と一緒にビデオ撮影の準備。楽しそうでした。

……仲間と一緒に古武道を見るのはたのしいだろうなあ。

演武者が整列し、いよいよ「第43回日本古武道演武大会」開催。
合図の太鼓が大きく鳴り響きました。
音の方向を見ると、黒いスーツ姿の若者が、野球のバットでもふりまわすかのように、大きな撥(バチ)を使って、力いっぱい太鼓を叩いています。
いつものレイアウトなら死角になっていて、太鼓を叩く人の姿は見えないんですが。
まさかスーツ姿で太鼓を叩いているとは思わなかった。

演武大会のスタッフは黒い背広や黒のトレーナー姿の若者で、弓や砲術では的を用意したり、抜刀術で藁斬りが行われた後の片付けをしたり、すばやく、しかも黒子(くろこ)のように目立たず、演武者のサポートをしています。
スタッフの陰ながらの尽力があるからこそ、演武会の運営がスムーズなのですが、今回は、いつもと違う会場だから、設営が大変だったと思います。

国歌斉唱、大会挨拶、来賓の祝辞、古武道功労者表彰……ここまでは滞りなくすすみましたが、問題は演武です。

演武始めは小笠原流弓馬術。烏帽子、直垂姿の若者が弓を持って入場してきました。
演武者にとっても、スタッフにとっても、観覧者にとっても「いつもと違う」演武大会。

さて、どうなるでしょうか。

次回に続く……

(この記事は2020年2月14日の情報を元に書かれています)
ラベル:武道
posted by ゆか at 23:47| Comment(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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