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2020年02月21日

令和二年の古武道演武大会(中編)圧力

日本古武道演武大会の演武始めは、鎌倉時代に始まった「小笠原流弓馬術(おがさわらりゅうきゅうばじゅつ)」。演武納めは江戸時代末期に現れた「砲術」で、古武道の歴史の流れを演出しているんですね。
小笠原流弓馬術は「流鏑馬(やぶさめ)」で有名ですが、ここでは「百々式(ももてしき)」と呼ばれる魔を祓う神事で、一直線に並んだ5人の射手が次々に矢を放っていきます。

それにしても、今年の烏帽子直垂装束は地味……いつもはもっと赤やら緑やら、派手な装束なんですが。
この数年、古武道の世界でも「インスタ映え」を意識して、派手な衣装や、空中で受け身をするような動きの大きな投げ技がトレンドでしたが、普段の稽古をほうふつとさせる地味な衣装も悪くない。

神道夢想流杖術(しんとうむそうりゅうじょうじゅつ)
一本の棒に似た武器、杖(じょう)を巧みに操る流派で、今回は手前と奥の演武者が別の動きをするので、どっちに焦点を当てたものか、非常に迷う。

……今回はミラーレス一眼のカメラをレンタルしてみたんですが、これは大失敗。AIの反射神経が鈍い。
「ここぞ」というタイミングでシャッター切ってるのに、シャッターがおりないし、「なんでそんなとこで」と思うところでシャッターがおりたりする。
失敗だったなあ。今度はちゃんと一眼レフを選ぼう。演武は続きます。

兵法タイ捨流(ひょうほうたいしゃりゅう)
「相手の足元を狙った攻撃を避けるために、垂直に飛び跳ねる剣術」のイメージが強い流派ですが、今回は静かで間合いを詰める駆け引きで見せました。

澁川流柔術(しぶかわりゅうじゅうじゅつ)
十手や棒術を使うところは合気道と違うけれども、短刀取りは合気道を思い出させます。
水鷗流居合剣法・正木流鎖鎌術(すいおうりゅういあいけんぽう・まさきりゅうくさりがまじゅつ)
「居合」といっていますが、水鷗流は総合武術で、かなり荒っぽい。居合と鎖鎌を同時に見せる演武には驚かされます。

隣の大東流の皆さんはグループで来ていて、交代で三脚で固定したビデオカメラをのぞいています。……ああ、ビデオで撮影すればよかったなあ。

初實剣理方一流剣術(しょじつけんりかたいちりゅうけんじゅつ)
静かでいて、打ち込みが恐ろしく早い剣術。特に正座した状態から一瞬で相手に斬りかかる動きには圧倒されました。
金硬流唐手・沖縄古武術(きんがいりゅうからて・おきなわこぶじゅつ)
空手の息吹がこちらまで聞こえてきました。サイ・月鎌などの変わった武器を使う流派で鎖のついた鎌をヌンチャクのように振り回していたのが興味深かったです。

心月無想柳流柔術(しんげつむそうやなぎりゅうじゅうじゅつ)
短刀取りが主体の投げ技が多いですが、合気道のように「相手の力を利用して投げる」というより「やや力で押し切る」感じの技。
貫心流居合術(かんしんりゅういあいじゅつ)
こちらまで、刀の風切り音がはっきり聞こえてくる。迫力に満ちた居合の演武でした。

日本武道館の日本古武道演武大会の時もそうなんですが、館内に『私語を禁ず!』の貼り紙があるわけでもないのに、なぜか途中から、誰もしゃべらなくなるのです。
特に今回は、「いつもと違う場所での演武」なので、観覧者も演武を集中して見ようとするのでしょう。

雲弘流剣術(うんこうりゅうけんじゅつ)
以前「お坊さんのような静かな剣術」と書いたことがありますが、鋭い気合で相手を威嚇することも激しく剣を打ち合うこともないのに、なぜか威圧感がある演武でした。

宝蔵院流高田派槍術(ほうぞういんりゅうたかだはそうじゅつ)
稽古で使う槍の柄になる材木を、自ら植林しはじめた今流行りの「SDGs(エスディージーズ・持続可能な開発)」な流派。長い槍を自在に使い相手の懐に入る演武はすばらしい。
卜傳流剣術(ぼくでんりゅうけんじゅつ)
剣術なのに、間合いの駆け引きはあまりなく、ずかずかと間合いを詰めて相手を押し切るような動き。

竹内流柔術日下捕手開山(たけのうちりゅうじゅうじゅつひのしたとりてかいざん)
竹内流柔術は合気道の祖先の流派で総合武術。この流派も竹内流の特徴「垂直に飛び跳ねる動き」をよくします。戦国時代は「足を斬られる」ことが多かったので、その頃にできた流派は垂直に飛び跳ねて攻撃を避けたのでしょう。
柳生心眼流體術(やぎゅうしんがんりゅうたいじゅつ)
「體術」とは柔術・剣術・棒術・薙刀術・居合などを取り込んだ総合武術。女性が大きな男性をかつぎ上げて投げ落とす演武に観覧席はどよめきました。

……それにしても、東京武道館は日本武道館と違って、電光掲示板に流派の名前と演武者の名前が出るわけじゃないから、パンフレットを買ってないと、演武場で何が行われてるか、さっぱりわからないぞ。

鹿島神傳直心影流剣術(かしましんでんじきしんかげりゅうけんじゅつ)
「ヤーヘイ!」という独特の気合いで知られる流派。「剣を打ち合う」というより「お互いの力を練り合う」演武でした。
二刀神影流鎖鎌術(にとうしんかげりゅうくさりがまじゅつ)
正木流の鎖鎌術が「力の鎖鎌」なら、二刀神影流の鎖鎌術は「技の鎖鎌」。動いている相手の籠手や額の防具に正確に分銅を当てている。なんという正確さ。

天道流薙刀術(てんどうりゅうなぎなたじゅつ)
女性ばかりなのに、なぜか力強い、粘りのある動き。二刀流と薙刀の演武がすばらしかったです。
円心流居合据物斬剣法(えんしんりゅういあいすえものぎりけんぽう)
この流派は藁斬りで知られていますが、今回は居合の鋭い動きを見せる方に徹したようです。

ここで昼休み。あと3時間ほど演武が続くので、ここでトイレに行っておきます。
昼ご飯を買いに行く人も多いけれども、20分の休憩時間で買いに行って食べて帰ってくるのは無理。

自分の席に戻る途中で、観覧席の年配の女性の皆さんから、笑顔で「がんばってください」と声をかけられたりしました。
どうやら、大東流の年配者の方と「ブログを書いてます」と話してたのを聞いていたみたいですね。
演武者でもないのに、にこやかに「がんばってください」と言われたのも、かなり珍しいケースですが、これはこれでプレッシャーのような……

……次回に続く。
(この記事は2020年2月20日時点の情報を元に書かれています)
posted by ゆか at 11:44| Comment(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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