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2020年02月28日

令和二年の古武道演武大会(後編) 一人

さて、昼休みが終わって、午後の演武に入ります。隣の大東流のグループはコンビニのお弁当を買ってきて、みんなで食べている。

私が古武道を見る時はいつも単独行動なので、「みんなで楽しく古武道観覧」というのが、ちょっとうらやましい。
でも大阪から飛行機で一緒に古武道を見に行ってくれる人がいないし、現地で打ち合わせて一緒に演武を見る、というほど親しい人もなかなかできないので、まあ、しょうがない。

前半ここまできて、各流派、例年よりも、やや動きが重い。
各流派、去年に比べて若者が少ないし、演武装束も地味。
……やっぱり、演武者にとって、東京武道館は「アウェイ」なのかなあ。

神道無念流剣術(しんどうむねんりゅうけんじゅつ)
桂小五郎が免許皆伝となったことで有名な流派。
「正面」と呼ばれる来賓席に向かって演武する流派が多い中、ここは全方向の観客に向けて演技を見せました。

大東流合気柔術琢磨会(だいとうりゅうあいきじゅうじゅつたくまかい)
大阪の大東流合気柔術。
大東流合気柔術は合気道の直系の先祖で、合気道の開祖・植芝盛平先生が大東流合気柔術を大阪で教えていたころ、大阪朝日新聞社に勤務していた久琢磨先生が、植芝先生の技を写真で記録しています。
ちなみに、私が武道に興味を持ったのは、私の夫が大東流合気柔術2段で、「喘息を軽くする丹田呼吸法を習得できるから、合気道を習ってみろ」と勧めたからです。

東京の大東流合気柔術本部の演武と比べると、どことなく柔らかく、なんとなく合気道に近い感じがしますが、合気道にはない「急所技」や「合気技」が見られるところが、やっぱり大東流合気柔術。
神奈川や千葉から集まってきた大東流合気柔術のグループも、熱心に動画を撮影しています。

直心影流薙刀術(じきしんかげりゅうなぎなたじゅつ)
年配の演武者が多いものの動きは早く、バラバラに動いているようでも、全体的にまとまりのある演武でした。

後半からは、各流派、いつも通りの動きに戻ってきましたね。やれやれ。

野田派二天一流剣術(のだはにてんいちりゅうけんじゅつ)
宮本武蔵で知られる二刀流の流派。
静まり返った演武場に「ズウー!」「タンッ!」「ヘッタイ!」という独特な気合いが響き渡ります。

尾張貫流槍術(おわりかんりゅうそうじゅつ)
剣道で使う面や胴をつけ、普段の打ち合いの稽古風景を彷彿させる演武。

気樂流柔術(きらくりゅうじゅうじゅつ)
身体を低く伏せて相手の攻撃を避ける動き。
相手が下の方から斬りかかるのを垂直に跳び上がって避ける流派はあるのですが、これは珍しい。
投げ技は相手の力を利用する、柔道に似た力学的な動き。

鹿島新當流柔術(かしましんとうりゅうけんじゅつ)
丈の短い稽古着からはみ出した腕が太い。
木刀が太いので腕力が必須、独特の低い重心を保つために足腰の強さも必須の流派です。
鹿島の武人も登場。今年もきれのある演武を見せました。

荒木流軍用小具足(あらきりゅうぐんようこぐそく)
珍しい二本差しの居合。「刀と脇差」という組み合わせではなく、二本の刀がほぼ同じ長さなのに、引っかからずに自由に動かせるところがすごい。

糸洲流空手(いとすりゅうからて)
唐手や琉球古武術のような武器技を使わず、型と組手だけで魅せる力強い動きでした。

長谷川流和術(はせがわりゅうやわらじゅつ)
両手で刀をふりかぶる相手を制して、蹴倒す動きに注目。
というのは、合気道は刀で斬りつけてきた相手を「避ける」ことからはじまるので、正面から押さえて「蹴倒す」技は興味深いものです。

立身流兵法(たつみりゅうへいほう)
座った状態で刀を抜いて、立ち上がりつつ相手を斬る……高度な動きと「イヤーイ!」という独特の気合いの打ち合いに圧倒されました。

戸田派武甲流薙刀術(とだはぶこうりゅうなぎなたじゅつ)
薙刀の切っ先で斬るけでなく、柄の部分を有効に使い、薙刀を器用に回しながら間合いを詰める技。
「鍵付薙刀」という珍しい薙刀が使われた演武。
このあたりは演武パンフレットを買ってない人には楽しめないだろうな。

鐘捲流抜刀術(かねまきりゅうばっとうじゅつ)
作務衣風の道着に白足袋の組み合わせが独特な室町時代の剣術。
足の踏み込み方が変わっているので、ネットに上がっている動画を見てください。

和道流柔術拳法(わどうりゅうじゅうじゅつけんぽう)
「柔術拳法」……空手の直線的で鋭利な突きとは違い、柔らかでありながらも力強く底知れない動き。

小野派一刀流剣術(おのはいっとうりゅうけんじゅつ)
「鬼籠手」と呼ばれる巨大なグローブ状の防具をつけた相手に、木刀で打ち込む稽古。
鬼籠手に木刀が当たるたびに「パンッ!」とよい音が演武場に響き渡ります。
立ち合い抜刀の演武では、仕太刀も打ち太刀も殺気を持って本気で打ち合っているのに驚きました。

為我流派勝新流柔術(いがりゅうはかつしんりゅうじゅうじゅつ)
「イヤーッ!」「サアーッ!」の気合いが勇ましい、力あふれる演武。

演武納めは幕末に現れた森重流砲術(もりしげりゅうほうじゅつ)
「火ぶたを切れ!」「放て!」の号令とともに一列に並んだ射手が、一斉に的に向かって鉄砲を撃ちます。
轟音と火花、立ち昇る白い煙。観衆のどよめき。……ああ、いつも通りの演武納めだ。

これで令和二年日本古武道演武大会も終了。
やれやれ。今年も無事に演武が終わった。
ちょっと安心して荷物を片づけていると……

「いかがでしたか?楽しめましたか?」

声をかけてきたのは大東流の年配の方。
演武大会中、大東流のグループのメンバーに声をかけたり、指示したりしていたリーダーらしき方です。

「ありがとうございます。今年も、無事に終わってほっとしました」
「いい記事書いてくださいよ」

……ああ、またプレッシャーかける。

周囲の皆さんとも「お疲れさまでした。またお目にかかりましょう」と挨拶し合って別れました。

出口では日本武道館のスタッフが、アンケート回収に一生懸命。
スタッフの皆さんも、慣れない東京武道館での設営、お疲れさまでした。

綾瀬駅に戻る途中で、ふと、これまで、この演武大会で「こんにちは」とか「お疲れさま」と言い合って別れるということがなかったことに気がつきました。
いつも一人でやってきて一人で演武を見て、一人で大阪へ帰る。
ひょっとしたら、来年の演武大会は、ちょっと状況が変わってるかもしれない。

まあ、とりあえず、また来年、日本武道館で会いましょう。

(この記事は2020年2月28日の情報を元に書かれています。)
posted by ゆか at 23:59| Comment(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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