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2005年07月02日

『美術館商売』

美術館に行くには、かなり覚悟がいる。空気が悪いわ、気になる作品をゆっくり見る暇もなく人ごみに押し流されるわ、疲れても椅子に座れないわ、土産物売り場はバーゲンセールみたいにやかましいわ……。

結局、ここ数年、テレビの美術番組で絵画を見て、通販でミュージアム・グッズを買う変な生活になってしまった。本当は、美術館で現物をゆっくり鑑賞したいのだが……。

著者は東京都板橋区立美術館の学芸員。この美術館は江戸時代の絵画を収集している。

限られた予算で、自治体や教育関係者の意見を踏まえて美術品を集める苦労。
光による退色などで劣化していく展示物を、どう美しく見せるか、レイアウトの工夫。
企画展用の他美術館の収蔵品を借りる手間。
限られた数の時間収蔵品で、いかに多くの来館者をひきつけるか、ない知恵を絞る常設展。

現代の美術館の直面している問題を、わかりやすく説明している。

美術館から遠ざかっていた私は反省した。


特に学校での美術教育のあり方についての問題提起は印象的だ。

私の世代もそうだが、美術の時間は「実技の時間」で、世界や日本の美術について知ったのは、社会科だった。
でも、限られた数の歴史的美術品の作者や時代を暗記するだけで、美術鑑賞の楽しみを知ったのは社会人になってから。
本屋や図書館の美術書。『日曜美術館』『開運!なんでも鑑定団』などのテレビ番組からだ。

もっと子供のころから、美術鑑賞の楽しみを知りたかった。

最近の教育指導要領の変更で、学校が積極的に美術館・博物館を利用する動きが強まっているが、授業時間の割り振りや日程調整などで、学校側も美術館との連携に苦労しているらしい。

現在、名古屋ボストン美術館や芦屋市立美術博物館など、経営不振で危機に陥っている美術館が多いが、美術品は世界中の人の財産なのだから、なんとか美術館にがんばってほしい。

もっと見に行くように努力するから。


『美術館商売』 安村敏信 著 勉誠出版




posted by ゆか at 16:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 本読みコラム | 更新情報をチェックする
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