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2021年07月23日

明鏡止水(前編)起こり

2021年7月23日。東京オリンピックの開会式の日。
今回のオリンピックは日本の武道「柔道」と「空手」が競技種目になっているので楽しみなところですが。さて、今月の武道系コラムは武人の間で評判の番組『明鏡止水』。
カリ・ジークンドー・USA修斗のインストラクターの資格を持つ岡田准一と、武道の経験者じゃないけれども、武道と格闘技の知識はすごいケンドーコバヤシが司会。

岡田准一が司会だったら、これは見ないと。

以前「木村拓哉の殺陣は、攻撃のモーションに入る前に、すっと腰が伸びる癖のようなものがあるけど、あれは剣道経験者だからなのかなあ。その点、岡田准一の殺陣は、何の気配もないところから、いきなり拳が飛んできそうでこわい」と夫に言ったら「キムタクを岡田准一と比べたりすな。かわいそうやろが」とたしなめられたことがあります。

殺陣と武道は違う動きのはずだけど、時代劇を見ていると、武道経験者かそうでないかは、立ち居振る舞いに出てしまうんですね。

録画しておいたのは『レギュラー番組への道 明鏡止水〜武のKAMIWAZA〜 四の巻 幕末の剣術』

「レギュラー番組への道」というのは、NHKの特番からレギュラー番組をめざす、ちょっと変わった番組を特集するもの。
この春、単発番組からレギュラー番組になった番組に『歴史探偵(佐藤二朗所長率いる歴史探偵が、科学実験、CGシミュレーションなどを駆使して歴史の謎に挑む番組:放映はNHK総合:毎週水曜日22:30~)』がありますが、果たして『明鏡止水』は、レギュラー番組になれるんでしょうか。

この番組は30分番組だけど、ゲストの顔ぶれがすごい。
コメンテーターにファッションモデルの市川紗椰。
武術家に黒田鉄山(第15代振武舘宗家)、中達也(日本空手協会総本部師範)、アレキサンダー・ベネット(関西大学教授)加藤恭司(天然理心流武術保存会代表)、サンドロ・フルツィ(天然理心流武術保存会 師範代)という豪華な顔ぶれ。

……武術家は語るのではなく実演するらしい。これは面白そう。

この「幕末の剣術」では3つの剣術流派が登場します。
「北辰一刀流剣術」「神道無念流剣術」「天然理心流剣術」。

3流派とも日本武道館の「日本古武道演武大会」で演武されている剣術で、幕末の有名人が学んだことで知られています。

「北辰一刀流剣術」は山岡鉄舟や坂本龍馬。
「神道無念流剣術」は桂小五郎や渋沢栄一。
「天然理心流剣術」は近藤勇や土方歳三など。

一般人にも知られている剣術を選んでいますね。

最初のVTRは「幕末の三剣士」として有名な千葉周作が創始した「北辰一刀流剣術」。
「北辰」とは不動の星「北極星」のこと。
竹刀と防具を使った合理的な稽古で、それまで「秘伝」とされていた技を、武士だけではなく、町人や商人など大勢の人が学べるようにしました。

攻撃と防御が一体になった「切落(きりおとし:相手が打ち込んできた刀を、下からすりあげるような動きで力をそぎ、そのまま突く技)」が特徴的な剣術です。

玄武館の小西真円一之館長の演武「切落突き」は、動きがコンパクトで恐ろしく速い。
動きに全然ムダがありません。
「相手の前面から必ず情報がくる」という言葉が印象的でした。

この番組は重要なところはテロップが出るので、すごく親切です。

「攻撃しようとする心身の変化である「起こり」をとらえる」。
これがポイントです。

では、「起こり」とは具体的に何なのか……

畳が敷き詰められたスタジオで、日本空手協会総本部の中達也師範とその弟子による実証実験。
中師範が左手の手刀を「寸止め」で、お弟子さんの首に打ち込む。
「起こりがある時」と「起こりを消した時」と両方を比較します。

「起こり」がある場合、打ち込まれても、お弟子さんは右手で反射的に手刀を防ぐことができますが、「起こり」を消した状態では、防御できずに、簡単に手刀は首に入ってしまう。

……ああ、これは素人目にはわからないかもしれないけど。
この場合の「起こり」は、手刀を打ち込む動作に入る一瞬前に、中師範の表情が険しくなり、目が手刀を打ち込む方向へ動いています。
「起こり」を消した場合は表情も目も動かないので、これは防げないかもしれない。

「相手の目の動きを見る。よほどの達人じゃない限りは、相手がモーションに入る前に打ち込もうとする場所へ目玉が動く」

極真空手4段の夫が言っていたのを思い出しました。

「起こり」は素人にも感じ取れるか?

ここで、一般人代表のケンドーコバヤシが実験に参加。
驚いたことに、「起こり」がある場合、素人でも攻撃を防ぐことができるんですね。
「起こり」を消した場合は、防げないけど。

ここで、黒田鉄山先生が登場。
居合術・柔術・棒術・剣術・活殺術を極めた達人です。

スタジオで「起こりのない居合」の演武。

左足は正座、右足は胡坐の体勢「立て膝」から、立ち上がり、そのまま相手を切る動作ですが、その立ち上がり方がすごい。
普通は一旦重心が左足に乗り、それから足に力を入れて、「よっこらしょ」という感じで立ち上がるんですが、黒田先生の場合は、腰がそのまま垂直に動いて、ムダな力を使わずにすばやく動ける。
「浮き身」と呼ばれる昔の武術の達人の動きです。

これはすごい。
充実した番組だなあ。

1時間ぐらいかかったのかと思って、時計を見ると15分もたっていない。この密度の濃さ。
『明鏡止水』は、とんでもない番組です。

次回に続く……

(この記事は2021年7月23日時点の情報をもとに書かれています。)
ラベル:武道
posted by ゆか at 23:51| Comment(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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