新着記事

2022年02月25日

令和4年の日本古武道演武大会(後編)一長一短

さて、今年の「日本古武道演武大会」は異例の「無観客開催・オンラインライブ中継」。
今年は自宅のテレビで夫と二人で見る……ちょっと変わった趣向になりました。

「お前、毎年、東京まで行って、4時間もこういうのを見てるんか」

半ば呆れながらも、夫は動画鑑賞に付き合ってくれます。

今年は、4時間半の演武大会を3分割して、自宅で1時間半ずつ見ているわけですが……

いつもの年だったら、5時起きで7時の飛行機で東京へ行き、10時前には日本武道館に到着。
そのまま16時過ぎまで「日本古武道演武大会」を見て、19時の大阪行きの飛行機で帰阪。
21時半には自宅にいる。

……それがこれまでやれていた自分が不思議です。

さて、演武大会は「本體楊心流柔術(ほんたいようじんりゅうじゅうじゅつ)」から。
関節技主体の比較的おとなしい柔術の技と、鋭い棒の動きの対比が楽しい。

今年の演武は「コロナ禍だから、いつもと違った演武で」という流派と「コロナ禍でも、普段通りの演武で」という流派に分かれていますが、この流派は前者できましたか。

続く「関口流抜刀術(せきぐちりゅういあい)」。
「静かな技やな」と夫は呟きました。鯉口を切る動作や、納刀の時の手の動きが拡大されて映るから、その点は動画の方が見やすいですね。
小太刀術の太刀さばきも鮮やかでした。

「荒木流拳法(あらきりゅうけんぽう)」は、「拳法」なのに、棒や鎖鎌、棒に分銅鎖がついた「乳切木(ちぎりき)」と呼ばれる武器を持ってきて、やる気満々。
期待にたがわず、堂々とした武器技の連続。
乳切木の鎖で相手の刀を奪う、鎖鎌の鎖を相手の首に巻きつけるなど、武器を使う側と技を受ける側が、一体となった見事な演武でした。

「大東流合気柔術(だいとうりゅうあいきじゅうじゅつ)」……合気道の源流であり、夫が学んだ古武道です。

畳の上で滑るような膝行(しっこう:正座したまま前進する動き)と、激しい居合刀の打ち合い。
4人がかりでかかってきた相手を同時に制圧する「合気の術」など、演武の組み立て方が上手です。
夫は無言で見入っていました。

ここまで演武が進んで、またしても清掃タイムになり演武中断。

「また掃除か」

うんざりした口調で夫は言いました。
いや、迅速に清掃をすませるスタッフには申し訳ないけれども、感染防止のために、演武3回に1回ぐらいの頻度で清掃タイムがあって、そのたびに演武が中断するのはしんどい。

たとえて言うなら、「CMの入ったナイター中継に慣れた人が、球場で野球を見て、攻守交代の時間に微妙にイラつく」。
そんな感じですね。
来年はコロナ禍が収まってるだろうから、今年だけの我慢。

清掃タイムの後、演武再開。

上から打ち下ろすと見せかけて、手元で杖をスライドさせて下から突く。
鋭い気合いとともに相手の刀を打ち落とし、目にもとまらぬ速さで相手を突く。
豪快に杖で打ち合う「無比無敵流杖術(むひむてきりゅうじょうじゅつ)」。

正座した状態から垂直に飛び上がって相手を斬り、激しく太い木刀を打ち合う「天真正伝香取神道流剣術(てんしんしょうでんかとりしんとうりゅうけんじゅつ)」。

「無雙直傳英信流居合術(むそうじきでんえいしんりゅういあいじゅつ)」で使われる刀は、長くて刃の幅が広い。

「この刀、長くない?」
「長いし、刃がごついわ。これを振るのは大変やで」

その長くて重い刀を使って、性別も体格も違う演武者が全員揃った動きをする。
非常にレベルの高い演武でした。

ここで最後の清掃タイム。

その後が「天神真楊流柔術(てんじんしんようりゅうじゅうじゅつ)」。

「柔道の先祖や」
「そうなんや」

柔道の創始者・嘉納治五郎先生は、「天神真楊流柔術」と「起倒流柔術(きとうりゅうじゅうじゅつ)」を学んだ後に柔道を作られたので、技が似ています。

さらに、源義経が学んだという言い伝えのある京都の剣術「鞍馬流剣術(くらまりゅうけんじゅつ)」。

「剣道の動きに近い技あるな」
「そうなんや」

いくつかの型が現在の剣道にも組み込まれています。
「ヤーッ」という独特の長い気合いとムダのない動きに魅せられました。

そして、演武のクライマックスは実物の火薬を使った砲術。
武道館の床にマットが敷き詰められ、消火器を持った武道館職員が待機。
物々しい雰囲気です。

黒田藩お留流・福岡市有形文化財の「陽流砲術(ようりゅうほうじゅつ)」が使うのは大筒。
火薬を筒に棒で詰める様子や、火縄に火をつける様子など、普段、目にすることができない角度で、しかも拡大して見せてもらえたのがよかったです。

演武のオンライン配信の利点は「演武者の見せ場を的確にとらえることができること」「手元や表情などが拡大で映せること」。
難点は「臨場感がないこと」「見る側が見たい角度を選べないこと」。
一長一短ですが、今回、カメラワークの切り替えが非常にうまかったので、違和感なく演武を楽しむことができました。

演武納めの後、閉会宣言。

……これが今一つ詰めが甘い。
鳴り響く閉会の合図の太鼓。バタバタと片付けしている光景が、しばらく映って中継が終わり。
ここまで演武の中継ができるんだったら、最後まで、きっちりと締めくくってほしかったなあ。惜しい。

演武が終わったところで、来賓席の閉会宣言だけ映して、武道館職員が閉会の合図の太鼓を叩いているシーンを映しつつ、フェードアウトするとか。
何か工夫の余地がありそうです。

「日本古武道演武大会」のライブ配信を見た後、夫に感想を聞いてみました。

「初めての日本古武道演武大会、どんな感じ」
「なかなかやった。それにしても、よう、こんな長い時間の演武見てるな」
「……もし、来年、コロナが収まってたら、行ってもいい?」
「好きにせいや」
「ありがとう」

今年の「日本古武道演武大会」は、コロナ禍の中で、感染防止のために、演武者も関係者も苦労されているのが、画面からも伝わってきました。
コロナ禍が収まって、また例年通りに、普通の「日本古武道演武大会」が開催できる日が来ることを、祈っています。
ラベル:武道 合気道
posted by ゆか at 23:53| Comment(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
にほんブログ村ランキング
こちらには『ventus』で書かれている内容と同じ分野のブログがたくさんあります。
もし、よろしければご覧ください。

武術・武道ブログランキング

ステーショナリー雑貨ブログランキング