本の帯の推薦文の文言の大仰なこと。
この本に作品を収録された「名文家」の一人としては、気恥ずかしい。
表題の『人生の落第坊主』とは、ドイツ文学者の池内紀氏のエッセイ。
たぐいまれな才能を持ちながらも、『世に合わず、役に立たない頑固さ』を持ったがゆえに『せっかくのチャンスに「中央」に出そびれた』。
そして世に埋もれた人々……
大変耳の痛い話だ。
実は、私の作品が、日本で最も権威のあるエッセイ集に選ばれた2004年夏。
皮肉にも、この時私は絶体絶命だった。
1993年から入退院を繰り返していた夫の母の病状が悪化。
介護保険申請を決断。
認可率3割以下の申請。
その上、介護者と被介護者、親族、介護施設、病院、行政の思惑が錯綜し、毎日状況が二転三転。
夫までもが過労で倒れて入院。
私は無我夢中で奔走した。
結局、申請は下り、義母は奇跡的に回復。夫も退院した。
後に、ある人に「せっかくのチャンスやったのに。なんで、その時、病院に旦那と姑ほっといて、荷物まとめて、東京に出ぇへんかったの?」と言われて驚いた。
そんなこと、考えもしなかった。
「中央に出る」には、そのくらいの覚悟がいるらしい。
3年たって、文庫版が出版された2007年。
現実を変えられず、「埋もれたまま」の私。
今年は強運期なのだが、残念ながら2004年と同じく、今の自分の居場所を守るために、運を使い果たしてしまう……
そんな予感がする。
次回のチャンスは、3年後の2010年。
その時の私はどうしているのだろうか?
『頑固に自分を変えない。言い回し上手に自分を言いくるめない。世間的尺度に、しなやかに合わせることもしない』……
池内氏の言う『役に立たない頑固さ』を持ったまま、あいかわらず、私は、今と同じ場所に立ちつくしているのかもしれない。
『人生の落第坊主』 日本エッセイストクラブ編 文春文庫
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