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今月号の中で、私の目を引いた記事は『NHKスペシャル・デザインウォーズ』の放映予告。
2007年7月23日(月) 午後10時〜10時49分。
NHK総合テレビ放映『NHKスペシャル・デザインウォーズ ケータイ開発の舞台裏』……。
見てみましたが、これはすごかった。
日本で携帯電話サービスが始まって20年。
単なる家電ではなく、個人の重要なコミュニケーションツールになっている携帯電話。
日本の若者の80%が、携帯をデザインで選んでいます。
NHKスペシャルでは、韓国のLG電子、日本のNEC、日本とスウェーデンに拠点を持つソニー・エリクソンの3社を取り上げ、「デザイン」を中心に据えた新しい携帯電話の開発競争の最前線に密着。
「日本のこれからのものづくりの形」を模索しています。
まず、韓国のLG電子。
2005年発表の「チョコレートフォン」は、世界初のタッチセンサー採用。
世界的大ヒットに。
プラダとのコラボレーション携帯で、さらに成功を収めたLG電子が、有力な国内メーカーがひしめく日本市場に、日本向けチョコレートフォンを投入……。
メールを打つことが多い日本ユーザーのために、ややボタンを大きく、ふくらみをつけました。
さらに、日本の携帯販売会社の厳しい注文。
画面をスライドして、タッチセンサーを出す時に、裏側にわずかに見えるレール。
それを目立たなくするために、レールの塗装の色を変更。
タッチセンサーも光を強く、光の色も、赤からオレンジへ……。
LG電子のデザイン戦略は「より薄く、スタイリッシュに」。
そのために、あえて携帯電話部品の機能を下げてでも、デザインを優先する姿勢は、ある意味「潔い」とも言えます。
LG電子は、来年下期の携帯電話のデザインを、デザインを学ぶ日本の大学生から公募。
もっと日本人に向いた携帯を作ろうと、着々と準備を進めています。
迎え撃つ日本の大手メーカーNEC。
インターネット高速通信機能やカメラ手ぶれ補正機能など、高い技術力を武器に次々と携帯を開発してきたNECですが、シェアはジリ貧気味。
そこで、これまでデザインを、開発の最終段階で決めていた体制から、開発当初からデザイナーが関わる体制に変更。
携帯のデザインを「薄くしたい」デザインチーム。
多機能になればなるほど部品が増え、「どうしてもある程度の厚みが必要」と主張する技術チーム。
ゲームやメールを多用するユーザーのために、「ボタン型」とするデザインチーム。
あくまでタッチセンサーにこだわる技術チーム。
「よりよいものを作るため」……どちらも一歩も譲らない。
双方の火花が出るような真剣なやりとりには、本当に感動しました。
NECの携帯のデザインが悪いのかというと、そうでもないのです。
『NEC』サイトによると、「SIMPURE N」、「N661」は2007年度ドイツiF賞受賞。
「SIMPURE N」、「701iECO」、「FOMA N702iD」、は2006年度グッドデザイン賞受賞。
ユニークなデザインのキッチングッズで知られる、アレッシィ社などのデザインを手がける、イタリアのステファノ・ジョバンノーニ氏や、アートディレクター佐藤可士和氏のデザインした携帯なども発売。
遅まきながら、デザイン戦略に方向転換し始めました。
現在、番組では「開発中」だった携帯も発売され、大人気だとか。
今後は「人の声の抑揚で色を変え、感情を色であらわす携帯電話」の開発を検討しているようです。
そして、ソニー・エリクソン。
この会社は、他の2社に比べて、携帯を「よりパーソナルなものへ」と考えているようです。
アロマ機能つき携帯や、フタを閉じると蝶やイルカのイルミネーションが輝くユニークなデザインの携帯が人気。
SONYのウォークマンの音声技術や高画質のBRAVIA画面などが導入された、機能的にも優れた携帯電話です。
ソニー・エリクソンの携帯電話開発のキーワードの1つが、「エモーション」。
「人間の感情をデザインする」という全く未知の領域。
定期的に世界中のデザイナーが集まり、価値観をぶつけ、話し合う「シンギ(審議)」。
各国から集まった大勢のデザイナーは、一つのテーブルを囲んで白熱、けれども楽しげな論争を繰り広げていました。
その中で、決定した2008年度の携帯電話開発コンセプトの一つが「パティーナ」。
その携帯電話を長く使っているうちに、独特の味が出てくる……いわゆる「ビンテージ」のような意味です。
今のところ、どんな携帯電話になるのかは不明ですが、その「パティーナ」携帯が、開発されると、これまで「消耗品」だった携帯電話の世界を変えるかもしれない。
ソニー・エリクソンの今後の動き。非常に楽しみです。
面白いことに、「デザイン優先」を掲げながら、この3社の「携帯電話」のとらえ方は異なります。
どちらかと言えば「スタイリッシュなアクセサリー」的なLG電子の携帯。
「優れたデザインの高性能超小型情報端末」のNECの携帯。
「持ち主の大切な宝物」になろうとするソニー・エリクソンの携帯。
それぞれが違う道を歩もうとしています。
「次の時代に何を「使いやすさとして見せる」か」
……NECクリエイティブ・スタジオの佐藤敏明氏の印象的な言葉。
私は、日本の伝統的な「ものづくり」の精神、『用の美(詳細は『グッドデザイン賞と新日本様式』)』を思い出しました。
「デザインウォーズ」は今後、携帯電話業界だけでなく、すべての日本の製造業に広がっていくでしょう。
高品質・高機能だけでなく、優れたデザインでなくては、世界市場で勝ち残っていけない。……
おそらく『用の美』は、日本のプロダクトデザインの切り札になると思います。
ラベル:グッドデザイン賞