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2023年01月27日

武蔵の剣(後編)攻めの剣・守りの剣

1月25日にNHKで放映された『明鏡止水』。「武蔵の剣・兵法二天一流の演武」「武蔵のライバル・鎖鎌の演武」「もう一つの武蔵の剣・円明流の演武」「忍術の体術の演武」「合気道の演武」「武蔵を破った神道夢想流杖術」「達人列伝」……

これだけの内容を30分に詰め込んでしまうのが、この番組の無茶なところです。

今回の見どころは「武蔵が創始した二つの兵法の比較」と「ゲストの合気会本部道場長・植芝充央先生」「武蔵を破るために作られた神道夢想流杖術」。

植芝充央先生は、合気道の開祖・植芝盛平先生の曽孫で、次の合気会道主になると言われている方。
演武を見られるのは15年ぶり。

「合気道と宮本武蔵に何か関係があるんですか?」という疑問を抱かれる方もおられるでしょうが。
宮本武蔵の書いた『五輪書』は、すべての武道家にとってバイブルのようなもの。
どの武道も『五輪書』の教えを大切にしています。

さて、番組を見ましょう。

司会は、俳優で武術家の岡田准一と、格闘技通のケンドーコバヤシ。
そして武術・武道の達人たち。
そのままだと、どんどんマニアックな内容になっていくから、ゲストに一般人代表で「ももいろクローバーZ」の百田夏菜子とコカドケンタロウ。
バランスをとった人選です。

一番気になるのは、武蔵が晩年に作り出した「兵法二天一流」と、若い頃に作り上げた「円明流」の違い。
なるほど。違いが鮮明に表れています。

兵法二天一流の奥義「喝咄(かつとつ)」。
相手にまっすぐに歩み寄りながら、大刀で相手の刀を受け流しつつ、執拗に小刀で相手の眉間や顔を狙う。
常に相手に向かって詰め寄っていくような「攻めの剣」。

対する尾張円明流の「九本目」。
打ち込んでくる相手の刀を左の小刀で払い、同時に右の大刀で相手の籠手を斬っている。

「二天一流よりも動きが少ないね。しかも早い」
「足を見ろ。足が違う」と夫。

二天一流は常に重心が移動していて「居つかない」けれども、円明流は相手の剣を受け止めるのに足を踏ん張ったりすることもある。
確かに足の使い方が違うみたい。

「攻めの剣」と「守りの剣」というところかな。

「体のバランスとかかとの使い方、身体全体で同一して動くとか、古来の剣術の使い方、しっかり残っている」と岡田准一さんがコメント。

しかし『親指と小指の付け根、かかと 3点で地面をつかむ』と、イラスト入りの画面で解説されても、一般人には「???」かもしれません

ここで、百田夏菜子が円明流1本目を体験。
「左手と左足を同時に出す」とか「膝を開く」とか、現代人がやらない動きに四苦八苦。
それでも楽しそうでした。

円明流の紹介が終わると、合気道・植芝充央先生の登場。
合気道の構え「半身」「四方投げ」「正面打ち入身投げ」「座技正面打ち一教」「半身半立ち四方投げ」を披露。
2008年に『演武会(後編)』で植芝充央先生の演武について「白き旋風」と表現しましたが。

15年後の2023年の演武は、昔より肩の力が抜けた動きでムダがない。
さりげなくコンパクトな動きで、すばやく相手の動きを封じてしまう。
「一陣の風」というべきかな。

『達人列伝』では、名古屋で私財をなげうって尾張藩伝来の古武術の伝承に尽力した加藤伊三男先生が紹介され、再び「武蔵の剣」。
「二刀流」のイメージが強い兵法二天一流ですが、一刀流の型も伝えられています。

その真髄が相手の死角に入る「入身(いりみ)」。
相手に合わせて呼吸を読む「拍子を知る」。

再び植芝充央先生が登場。
「入身」「転換(片足を軸に180°回転する動き)」「転身(前の足を曲線的に下げて相手の体勢を崩し、自分の中心に導く動き)」を実演。
多人数掛けの演武は非常に美しいものでした。

最後は、武蔵を破った武術……神道夢想流杖術。
流祖の夢想権之助は一度武蔵に敗れ、武蔵を破るために杖術の技を考案。
再び武蔵と戦って勝ちました。

武蔵の小太刀を封じる技「小太刀落(こだちおとし)」。
「円明流VS杖術」では、杖を振り回す、手の中で滑らせて杖の間合いを変えるなど、変幻自在の動きで、剣の間合いを作らせない。

武蔵に勝つための奥義「水月(すいげつ)」の演武では、小太刀と大太刀との激しい打ち合い。
上段から振り下ろされた杖が小太刀と大太刀で止められた……と思いきや、杖の逆側で水月(胃のあたりにある急所)を打つ。

「あ、これ、防ぎようがないわ」
「だから杖は怖いんや」

「武術の稽古は続けていくことが大事」というまとめで、番組は終了。
毎回のことながら、密度の濃い内容でした。

「もう少しひとつひとつの技を、じっくり見たいな」
「2月に東京で見れるやろ」

そうでした。
2月5日、日本古武道演武大会で「神道夢想流杖術」と「野田派二天一流剣術」の演武があるんでした。

久しぶりに、生で古武道が見られる日本古武道演武大会。
楽しみです。
ラベル:合気道 武術 武道
posted by ゆか at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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