去年は無観客開催でしたが、動画でリアルタイム配信されました。
今年は普通に演武大会が開催されることになってるけど……なんだか気が乗らない。
去年の動画を見て、「これだけきれいに編集された映像が、ネットで無料配信されているんだったら、わざわざ自分が東京行って写真撮らなきゃいけないか?」とも思いました。
……さて、どうしよう。
「お前、今年は日本古武道演武大会、行くんか?」
「どうしようかと思ってる」
「YouTubeで配信されるんやったら、別に東京まで行く必要ないやんか。金かかるし」
「それはそうやけど」
「家で見たらええやんか。まだコロナ、流行ってるんやし」
「……そうやなあ」
「なんか、納得いっとらんようやな」
「……もし、日本武道館から招待状が来たら東京へ行く。来なければ、それまでの縁やろ」
「まあ、好きにせいや」
……そういってると、招待状がきました。
3年ぶりなのに忘れていなかったんだ。
飛行機の手配をして、東京に向かうことにしました。
2023年2月5日の東京は、穏やかな天気。
会場の日本武道館では、入り口で一人ずつ手指の消毒と体温チェック。
いつもながら運営スタッフの努力には頭が下がります。
2020年の東京オリンピックのために大規模な改修工事が行われた日本武道館。
外観はそれほど変わらないんだけど、中のデザインは明るくきれいになっていました。
照明はLED。トイレのリニューアルや車椅子観覧席の設置など、観客が快適に過ごせる工夫がされています。
なによりも冷暖房完備になったことがうれしい。
客席には「着席禁止」の紙が貼られた椅子。隣の観客と密着しないように、椅子を一つずつ空けて座ります。
今も毎日コロナ患者が出ている状態なので、これはいたしかたないかも。
いつもと同じ席に座り、カメラやメモの準備をします。
来賓席に合気道の道主先生の姿が。本当に久しぶりです。
10時30分になり、令和5年の「日本古武道演武大会」がスタート。
「開会宣言」。「国歌清聴」では、「歌を歌わないでください」というアナウンスがあり、音楽だけが流れます。
主催者の挨拶や祝辞が終わると、「古武道功労者表彰」。
プログラム通りの進行。
ちなみに、「日本古武道演武大会」では、当日の演武プログラムを販売。
各流派の演武の解説書で、68ページにわたる豪華なもの。
紙や印刷代が値上がりしているというのに、お値段は変わらず1冊500円。
巻末に広告が増えてるけど、これはしょうがないですね。
演武始めは、いつもと同じで、鎌倉時代に発祥した「小笠原流弓馬術(おがさわらりゅうきゅうばじゅつ)」。
新型コロナウィルス感染収束を祈願する「百々手式(ももてしき)」の演武。
烏帽子直垂姿の7人の射手が一直線に並んで、弓矢で一つの的を狙います。
続いては、今年の古武道功労者表彰を受けた「天道流薙刀術(てんどうりゅうなぎなたじゅつ)」。
年配の女性が気合いの入った演武を見せます。
日本武道館の広い床の半分が畳、もう半分の床は板張り。
「心月無想柳流柔術(しんげつむそうやなぎりゅうじゅうじゅつ)」は、床の広さを生かして、板張りの床で剣術、畳貼りの床で柔術を披露。
「卜傳流剣術(ぼくでんりゅうけんじゅつ)」は、師範の動きはしなやかで、弟子の動きは力強い。
日常の稽古風景を彷彿させる演武。
今年は、演武の前に、演武流派の特徴と見どころを解説する「一言アナウンス」があるので助かります。
2本の鎖鎌を巧みに使う「二刀神影流鎖鎌術(にとうしんかげりゅうくさりがまじゅつ)」。
「立身流兵法(たつみりゅうへいほう)」は、演武者全員が稽古歴20年以上。円熟した技を見せました。
合気道開祖・植芝盛平先生も学んだ「柳生心眼流體術(やぎゅうしんがんりゅうたいじゅつ)」。
「尾張貫流槍術(おわりかんりゅうそうじゅつ)」は、防具をつけた激しい槍の打ち合いと、袋竹刀を使った柳生新陰流剣術の演武で「江戸の剣術道場」の雰囲気を再現。
ここで、今回チェックしたかった「野田派二天一流剣術(のだはにてんいちりゅうけんじゅつ)」が登場。宮本武蔵の「二天一流兵法」の系統です。
「ズー!」「タン!」「ヘッタイ!」の独特な発声で、相手との間合いを詰めていく。先日、NHKで放映されていた「明鏡止水」に登場した二天一流とは違いますが、これはこれで魅力的。
日本武道館に来るまでは、あまり気乗りしなかった演武観覧ですが、だんだんと演武に引き込まれていきました。
……次回に続く……
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