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2024年01月19日

輪島の漆

能登半島地震の余震は、いまだにおさまりません。

被災地の人々に一日も早く平穏な毎日が戻りますように。

ニュースで焼け野原になった輪島市の映像を見るたびに、29年前に起きた阪神淡路大震災で、一面焼け野原になった神戸のことを思い出します。
1995年1月17日。一瞬で台所とリビングの家財はがれきの山になりました。
停電で寒い朝、床に散乱したガラスの破片を踏まないように、スニーカーを履いて、立ったまま食パンをかじったこと。今も鮮明に覚えています。

あれから29年……またも大地震。
この地震で、室町時代から続く伝統産業、輪島塗が存続の危機にあるのを知って、心を痛めています。

輪島塗は作るのにものすごく手間がかかります。
木を切って乾燥させて、ロクロでお椀の形に木を削り、下地を塗って磨いて、漆を塗って、磨いて、艶出しして、さらに蒔絵や沈金などの加工をする……これを全部手作業でやっているんです。
だから高くなる。
でも、きちんと作られた漆器は100年以上もつし、修理もできるから結局はお得。

今、安い値段で出回っている漆器は、プラスチックに合成塗料を塗ったもの。
「食洗器対応」「電子レンジ対応」として売っている漆器は、ほとんど、このグレードの品物。

プラスチックの下地に漆を塗ったものも多く出回っていて、手ごろな値段で人気があります。
私も無印良品で売っている「河和田塗り汁椀」を試しに買ってみたのですが……
漆塗り仕上げでも、素地が木合(もくごう:木粉と合成樹脂の成型品)だから、味噌汁を入れたとたんに熱くて持てない。そして冷めるのも早い。
消費税込み1,490円のお値段ではしょうがないか。

やっぱり木をくりぬいた本格的なお椀がほしい。

去年、楽天で見つけたのが、越前漆器の伝統工芸士、梶原伸夫作木製京型汁椀溜。
丸みを帯びた形が美しく、木製なのに3,000円程度で買える。
「溜塗」は下地に赤い漆を塗って、その後、黒みを帯びた透明の漆を塗り重ねて仕上げる技法。
経年変化で漆が透明になり、お椀全体が赤みがかってくるそうなので楽しみです。

地震が少し落ち着いたら、「伝統産業を応援」ということで、輪島塗の応量器(おうりょうき:入れ子になったお椀や皿のセット)を買う予定。
味噌汁に、スープに、シチューに、煮物にと、意外に出番の多い汁椀。
二日に一度使っているんだから、1客1万円程度でも、減価償却的にそれほど高いわけではないけれども、これまで、なぜか「自分には分不相応」みたいな気がしていましたが、残りの人生も短いことだし、そういう思い込みは取っ払ってしまおう。

電子レンジ不可、冷蔵庫不可、食洗器不可、直射日光不可、付け置き洗い不可、直火での使用不可……
若い世代にとって、本漆の器は扱いにくい。
でも、私にとっては魅力的。

私は再来年、還暦になります。平均寿命から逆算して、元気でいられるのは、あと20年ぐらい。
作りたての味噌汁をお椀に盛って、食べ終わったら、すぐに洗って拭いてしまう。
そういうシンプルな生活がしたくなってきたのです。
まあ、悔いのないように暮らしたいですね。


ラベル:地震 お椀
posted by ゆか at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常コラム | 更新情報をチェックする
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