「年収103万円の壁の撤廃」……2024年10月27日の衆議院選挙で躍進した国民民主党が主張する「国民の手取りを増やす」政策の一つです。
「所得税基礎控除を178万円に引き上げることで、学生アルバイトやパート主婦の「働き控え」を解消する」ということなんですが……どうでしょうねえ。
『NHK NEWS WEB(2024年11月6日付)』の「自民税調「103万円の壁」見直しなど議論へ 国民も党内議論開始」。
ニュースを見ていて不安になりました。
これって、本当にできるのかな。
できたとしたら国の税収が減るけれども。
まさかその穴埋めに社会保険料を増額すると言い出すんじゃないか……
悪い予感は当たりました。
『共同通信(2024年11月8日付)』の「厚生年金、年収問わず加入へ」。
厚生労働省は厚生年金加入の年収要件を撤廃。
1週間の労働時間が20時間以上あれば、年収に関係なく厚生年金に加入するルールを変更する……
いきなりなんなんですか。
確かに「年収の壁」を超えると税金や社会保険料を負担するので手取り収入が減る。
だから、損をしないように「働き控え」をするパートやアルバイトが多いことは、ずっと問題になっていましたが、唐突な動きですね。
「103万円」と「106万円」、ややこしいので一度話をまとめてみましょう。
「年収の壁」とよばれるものに、「100万円」「103万円」「106万円」「130万円」「150万円」「201万円」の6種類があります。
年収が100万円を超えると住民税が発生。
103万円で所得税が発生して企業独自の配偶者手当がなくなることもあります。
週20時間以上働いて年収が106万円を超えると、扶養をはずれて厚生年金や健康保険料を自分ではらわなければなりません。(従業員51名以上の企業)
厚生年金に加入していない企業や従業員51名以下の企業では、年収が130万円を超えると国民年金や国民健康保険などの負担が増えます。
年収150万円を超えれば配偶者特別控除が段階的に減りはじめ、年収210万円で配偶者特別控除がなくなります。
政府税調が撤廃しようとしているのが税金の「103万円」。
厚生労働省が撤廃しようとしているのが厚生年金保険料の「106万円」。
よくわからないのは、なぜ今のタイミングで「年収の壁撤廃」の話が出てきたのか。
政府は「106万円の壁」を段階的に解消しようとして、2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」政策を行っていたはずです。
手取りが増えはじめる年収125万円を超える水準まで賃上げした企業に、国が従業員一人あたり最長3年間、最大50万円の助成金を支給する制度でした。
あまり制度が使われなかったのかもしれませんね。
ちなみに組合健保や協会けんぽの保険料って、厚生年金と連動していたんじゃなかったでしょうか?
「年収106万円の壁」が撤廃されれば、厚生年金だけでなく、健康保険料や介護保険料などの負担も増える……そうなると「週20時間働くと損」ということになって、さらに「働き控え」が進むような嫌な予感がします。
厚生年金や健康保険料は企業と従業員が折半しているので、社会保険料の負担を嫌う企業側も「週19時間だけ働いてほしい」と考えるかもしれません。
私も昔、扶養控除内で働いていた時期があるので、パート主婦の「働き損にならない程度に収入を抑えたい」という気持ちもわかるんですが、「働き控え」は自分の将来の年金に影響する問題。
できるだけ貯金や資産形成を心がけてくださいね。
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