合気道は二人一組で稽古します。
立ったままかける立ち技。
受け(技をかけられる側)が立ち、取り(技をかける側)が座った状態の半身半立(はんみはんだち)。
受け取り両方ともが正座した状態から技をかける座技(ざぎ)があります。
座技一教から四教とは、正座した状態で、関節技の一教、二教、三教、四教、と続けざまにかけていく技。
正直、これはしんどい。
同じ技を立った状態でかけるのにくらべると、倍の体力が必要。
後稽古で何度かやっていますが、自分の体力のなさを痛感しますね。
この座技をかける時に必要なのが膝行(しっこう)。
これがまた難しい。
一言で説明すると、「正座したまま前進後退反転する動き」。
現代人がやらない動きです。
まず、正座の状態からつまさきを立て跪坐(きざ)の状態になります。
この時、心持ち前かがみになると体勢が安定します。
跪坐の状態から腰を上げ、右膝を軸に左膝を立てて、足を一歩前へ。
右足のかかとは、左足のかかとにつける。
出した左足の膝を下ろす。
これで一歩進んだ状態です。
これを左右の膝で交互に行うのが膝行。
この膝行で挫折する初心者もたくさんいます。
今の時代劇を見ていると、家臣がお殿様に近づく時、すたすたと歩いていますが、本当は、お殿様には「膝行」で近づくのが正しいのです。
ちなみに『合気道ねっと』サイト、「みんなの稽古 きほんの動作」コーナーにアニメを使った説明がありますので、興味のある方はこちらをごらんください。
私が初心者の頃。
市のスポーツ教室「合気道」(現在の所属道場の支部にあたる)に通っていましたが、準備運動の中に「武道館の端から端まで膝行で往復」がありました。
スポーツ教室初日は大苦戦。
正座したまま立ち上がらずに前進するなんて、生まれて初めての動き。
途中でつまずいて転んでしまいました。
袴を履いた有段者や道着を着た白帯の人たちが、すいすい進んで、一人取り残されてしまい、後からパタパタ走ってついていく……そんな情けないことに。
「ふうん。スポーツ教室で膝行やるんか。そんなら膝サポーターいるわ。俺が選んだる」
私の話を聞いた夫は、そう言いました。
その次の休みの日に、二人でスポーツショップへ。
夫が勧めたサポーターを見て、私は思わず声を上げました。
「嫌やなあ。こんなごっついの」
夫が選んだのは、厚み1センチほどの四角のパッドの入りで、ゴムで固定する白い大きな膝サポーター。
ママさんバレーなどで見かけるものですが、夏につけたら暑苦しそう。
「もっとパッドの小さい、かっこいいやつがいいわ」
文句を言う私に、夫は真剣な顔で言いました。
「あかん。小さいパッドは膝痛める。座技によっては、膝の皿軸に回ったりせなあかんねん。その時、パッドが小さかったら、体重が膝の一部に中途半端にかかる。パッドの面積大きかったら、多少のことでも、衝撃分散して吸収できるねん。マジックテープで固定したやつは、正座しにくい。どうせ、道着の下につけるから見えへんやろ。膝は、ケガする前に守らんとあかん。いったん半月板やら靭帯やら損傷したら、治るのに時間かかるし、膝に水たまったりしたら、歩いたりする時もつらいんやで」
「膝に水たまる」に恐れをなした私は、おとなしく夫推薦のサポーターを購入。
「それから、膝行できるようになったから言うて、うれしがって、むやみに膝行すな。お前腰に欠陥あるし、背高い分重心が上やから、膝に負担かかりやすい。膝行は、座技と半身半立、技の時だけにしとけ」
空手四段剣道三段少林寺拳法三段大東流合気柔術二段柔道初段、空手と剣道で指導員経験のある夫の言葉……
今も忠実に守っています。
おかげで、合気道をはじめて6年。
膝を痛めたことはありません。
道場でも、座技をする時に、「膝を痛めてる方は、立ち技でも結構です」と、師範が声をかけられるほど、最近は、スポーツや仕事などで、膝を痛めている人はたくさんいます。
膝行……合気道には、必要な動きなのですが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」。
無理をせず、できれば、膝を痛める前に、膝サポーターをつけることをお勧めします。
……次回へ続く……
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膝行をやり過ぎたり座技でバランス崩した時に膝に負担があるようだったのですが、私もサポーターをつける事にします。
しかし旦那さんは頼もしいですね。