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2007年08月14日

座技と膝行(後編) 座技の戦慄

「僕も、できたら秋の昇段受けたいわ。一緒に練習しよか?」空手出身の合気道家、松さん(『古を鑑みる』(後編)などにコメントあり)に、そう誘われました。

道場の後稽古で一緒に、私の春の昇段審査見送りの原因になった技「座技呼吸投げ」(詳細は『障壁』(前編)にて)。
道場長代行からの宿題「座技一教から四教」(基本の正面打ち。それぞれに表技と裏技があります)を、交代でやってみましたが……二人とも大苦戦。

まず座技呼吸投げ……正座した状態で腕をつかみに来た相手を投げ、それを膝行(正座したまま前進)で追いかけ、さらに投げ続ける体力勝負の技。

相手を遠くに投げてしまうと、それを遠くまで追いかけなければならないので、自分がしんどい。
「いかに相手を近くに投げるか」は、もうすこし場数を踏まないとわからない。
そして、体力はまだ不足気味。

さらに座技正面打ち一教〜四教……立ったまま技をかける立ち技の時と、正座した状態とでは、高さが全然違うので、関節技をうまく極められない。
特に、二人とも苦手だった技が「座技正面打ち二教裏」。
難儀なことになりました。

「……なんか、昇段の道、険しいですね」

後稽古が終わって、私が弱音を吐くと、松さんは、のんびりした口調で言いました。

「あと、2ヶ月近くあるやんか。それまでになんとかしたらいいわ」

確かに、そうなのですが。
それにしても、座技正面打ち二教裏。
もし、この技が審査に出たら、とても不利なことになります……が。

「私でよければ、座技一教〜四教。受けを取らせていただきます」

……私が道場長代行に宿題を出されていることを知った、僧侶の有段者(『投げと受身』(後編)に登場)から、ありがたいお申し出。

スポーツ教室の後稽古で、準備体操の指導をしている有段者に見ていただき、僧侶の有段者に受けを取っていただいて、座技正面打ち一教〜四教(裏技・表技)をやってみました。

「……大体いけてますよ。二教裏の時、もたつくみたいですが」
「道場で稽古していた時も、二教裏、ネックだと思いました」

ここで受け(技をかけられる側)と取り(技をかける側)を交代。
僧侶の有段者に二教裏技をかけていただきます。

「立ち技の時は、相手の手首を取るのと、相手の手を自分の肩につけて手首を極めるのとをほとんど同時にできますが、座り技の場合、それはやりにくいです。まず、きちんと手首を取ってから、肩につけましょう。とにかく、あわてないで」
「わかりました」

「それじゃ、もう一度やってみましょう」

再び僧侶の有段者に受身を取ってもらって、座技一教〜四教。

「だいぶ、いい感じですよ。後はあわてないことですね」

見取り稽古をしてくださった有段者は、にこにこしながら言いました。
まだ完璧ではないものの、練習を繰り返せばなんとかなりそうです。

「道場長代行から座技の宿題出されてて、結構大変やねん」

そう夫に言うと、夫は笑いました。

「まあ、座技にも色々あるからな。……大東流には、蹴りなんかもあるで」
「正座からの蹴り? どうやって?!」

驚く私に、夫は苦笑しました。

「お前、蹴りいうたら、前蹴りだけとちゃうで……回し蹴りもあるんやで」
「……しまった! 回し蹴りがあったか!」

私は思わず大声を出しました。
正座から一瞬腰を上げて、片足を上げ、反対側の膝を軸に足を回転させれば、回し蹴りは可能。
正座して相対する近い間合いで、突然こんな形の蹴りを食らったらひとたまりもない。
恐るべし、大東流。

「やれやれ……お前もまだまだやな。もうちょっと想像力使えよ」

以前、道場で、居合の使い手の初段の若者(当時茶帯)と座礼をしている最中、彼に手刀で頭を狙われたことがあります。(詳細は『隙あり!(後編)』にて)
この時も、「居合の人間は、正座の状態から跳ぶことができるのに、お前は不用意な対応をした」と、夫にひどく叱られました。(詳細は『抜刀術(後編)』にて)

護身の世界では、「想像力の有無」が勝敗を分けるのです。
確かに私の不覚でした。  

もちろん、居合道の方も大東流合気柔術の方も、「みだりに争わない」武道家の皆様ですから、ご安心を。

ただ「正座している時、突然敵に襲われた時の対応」として、正座の状態から飛び上がり、相手に斬りつける技術や、蹴りを入れる技術があるのです。
そして、合気道の源流、大東流合気柔術には、合気道と同じく、正座からの投げ技や固め技もあります。
ちなみに、合気道の場合、正座している時に襲われた時は「座技正面打ち一教」「座技正面打ち入身投げ」などの技を使うのが一般的。

座技について調べていくと、昔の人は、正座した状態で、現代人が想像もできないほど自由に動いていたことがわかってきました。

座技……本当に奥深い世界です。
タグ:合気道 武道
posted by ゆか at 15:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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