「明鏡止水・武の五輪」以来、1年ぶりでしょうか。
今回のテーマは「侍・大谷翔平」。
「投手も野手もできて、打率もよくて盗塁もできる。メジャーリーグで大活躍の大谷翔平選手を招いて身体操法を語ってもらうのか。さすがはNHK」と思いきや。
「武術と野球の共通点について語る」……「武術VS野球」でした。
司会は武術インストラクターで俳優の岡田准一と、格闘技通のケンドーコバヤシ。
ゲストの山本彩(シンガーソングライター)はさておいて。
武術側のゲストは……
岡部武央(総合武道研究会玄武館会長)。
関展秀(淺山一傳流兵法第二十二世宗家)。
山城美智(沖縄拳法空手道六代目師範)。
宇城憲治(宇城塾総本部道場創心館館長)と相当たる顔ぶれ。
野球のゲストは……
元中日ドラゴンズ、アトランタ・ブレーブスでも投手として活躍した川上憲伸。
元千葉ロッテマリーンズやWBCで活躍、2008年のパリーグトップの盗塁阻止率.382 の記録を持つ強肩のキャッチャー・里崎智也。
元オリックス・バファローズの野手でメジャーリーグのワールドシリーズの出場経験がある田口壮。
こちらも豪華な顔ぶれ。
「大谷選手と言えば代名詞となっている「二刀流」ですよね」とケンドーコバヤシ。
「大谷選手の動きにも、日本的な身体観が活かされているのでは」と岡田准一。
そこから武術に話を持っていくのは、ちょっと強引かな。
でも、「投」「打」「走(るのを阻止する)」の3つの視点から、実演つきで「武術と野球の共通点」を探る……これはこれで面白い。
武術をトレーニングに取り入れる野球選手は結構います。
元ソフトバンクホークスの監督で「一本足打法」を確立した本塁打王・王貞治は「バットを振り抜く感覚を体得」するために、居合を学びました。
元ジャイアンツの投手・桑田真澄は古武術家の甲野善紀に師事して合理的な体の使い方を体得。
「バットを握る「手の内」と肘の鍛錬」を目的に、古武術の武器「釵(サイ)」をトレーニングに使うDeNAの牧秀悟。
……大谷翔平は出てこないけれども面白い。
「打(大谷翔平は2024年に54本のホームランを打っている)」。
野球の「打」を実演するのは田口壮。
豪快なスイングなのに体軸がまったくぶれない。
武術の「打」は関展秀の「釵」と宇城憲治の「刀の手の内(掌や手首の動き)」の演武。
「体の軸がぶれない」「体全体を使ってパワーを出す」「バット(刀)は柔らかく握る」……このあたりは野球も武術も同じ。
「投(大谷翔平は2018年からメジャーリーグでピッチャーとしても活躍)」
野球側は、元メジャーリーガー投手の川上憲伸と、元WBCのキャッチャー里崎智也のバッテリー。現役時代を思い出させるしなやかな美しいフォームと豪速球。
武術の方は、岡部武央の優美な太極拳の「掌打」と、関展秀の根岸流棒手裏剣の「直打法」の演武。
ポイントは「体幹を軸に全身で力を伝える」。
「走(2024年、大谷翔平は59盗塁)」は「盗塁を防ぐ(動きを見切る)には」」がテーマ。
目にもとまらぬ速さの返球を実演する里崎智也。
「牽制球がくるかどうかは見てわかる」と、打者の目線で解説する田口壮。
視野を広げて全体像の中で、ほんのわずかな動き(武道でいう「起こり」)を見極める……昔、合気道でそういう指導を受けたことがあります。
武術側は、岡部武央の「気配を消して「起こり(相手が攻撃を仕掛ける前に見せる予兆)」を見せない」中国武術の動きと、関展秀の居合の早抜き。
可能な限り早く無駄のない動きを極めると、武術も野球も同じところに行きついてしまう……映像を見ながら、ふとそんなことを思いました。
うーむ。なんだかわからないけど。すごいものを見たような気がする。
山本彩と田口壮が山城美智の指導で「釵(サイ)」に挑戦したり、川上憲伸が関展秀の指導で棒手裏剣を投げたり……みんな基礎ができてるから、すぐに感覚を会得できる。すごい。
他の番組では絶対出てこない企画ですね。
結局、大谷翔平選手の話題は全然出てこなかったけれども、これはこれで面白かったので、録画しておいてよかったと思いました。
2025年7月21日、午後11時35分から「明鏡止水」の再放送があるので、興味のある方は、ぜひご覧になるといいと思います。
あらゆるものを武術目線で斬る番組「明鏡止水」、次回の放映を楽しみにしていますよ。
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