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2005年08月06日

不覚でした(後編) 壁は越えられるか?

正面打ちの稽古で左目にケガをして半月……腫れは完全にひいて、左目のまぶたの赤黒いアザも完全に消えましたが、難題が残りました。

正面打ちの稽古で、受け(技をかけられる人)が、私の額を手刀で打とうと構えた瞬間、体が勝手に、後ずさりしようとするのです。
いくら私が自分の体に「動くな」と命令しても、どうしても体が言うことをききません。

実は、私の体には「私の意思」とは別に「私の体の意思」があります。
おそらく、生まれつき病弱だったため、体が自分の身を守るために、自己防御本能を発達させたのでしょう。

「空手では、目でとらえられない速度の相手の拳をよけるために、自分の心と体の防御本能をバラバラにする修練を積む」と聞いたことがあります。
私が「反射神経が異常に鋭くて武道向き」と言われるのは、心と体がバラバラに動いているためです。

「組み手の相手は基本的に仲間や。いきなり隙をついて蹴り入れてくるとか、そういうことはないから、安心して稽古しろ。そして、稽古の間だけ自己防御本能をセーブした『合気道モード』を作れ」

合気道を始める時、夫からそんな宿題を出されました。

でも、稽古中、うっかり相手の関節技をすり抜けたり、相手の拳をうっかり封じたりして、組み手してくださった有段者の皆様には、迷惑をかけ通しでした。

『合気道モード』を作るのに半年かかったのに、今、また、ケガがきっかけで、自己防御本能が暴走しはじめた……大問題です。


先日、道場長代行の指導で稽古中でのこと。

「次は正面打ち一教(手刀で面を狙ってくる相手を、こちらも手刀を振りかぶって受け流し、関節技で取り押さえるもの)」

代行は、私の方を見て、一瞬意味ありげに笑いました。

「受けは最初の正面打ちを寸止め、取り(技をかける人)はよけない。受けが打ち終わって、下がるところから、取りが技に入る」

私はぎょっとしました。前回左目にケガをした時とまったく同じパターン。

「オネガイシマス」
流暢な日本語で声をかけてきたのは、金髪碧眼の青年。
私と同じ上級者で、合気道の他に居合道も習っている武道好きのアメリカ人。

彼が正面打ちの体勢に入った途端、体が勝手に1メートル後ろに飛びのいてしまいました。

「ノー、ノー、ノー!」
注意されましたが、自分ではどうすることもできません。
たぶん、左目に肘打ちを食らわせた初心者と彼がまったく同じ体格だったので、自己防御本能が過剰に働いたのでしょう。

彼はしばらく考え込んだ後、「ウゴカナイデ」と言い、3メートル離れたところから、手刀を振り下ろしました。
これなら絶対に私に届きません。

手刀を打ち下ろしながら、一歩ずつ私に近づいてきました。
体は動きません。

最後に私の額3センチ手前で、ぴたりと手刀を止めました。
不思議なことに、体はぴくりとも動きませんでした。

「ツギハワザヤッテネ」
彼が額を打ってくるのを待ち、今度はスムーズに技をかけることができました。

「ヨクデキマシタ」
彼はにっこり笑いました。


稽古が終わった後、道場長代行が近づいてきました。

「どうや? 正面打ちの壁は乗り越えられたか」
「はい。もう大丈夫です」

代行はにやりと笑いました。

「まあ、合気道続けとったら、これからも、いっぱい壁にぶち当たるからな」
「でも、なんとかがんばります。ありがとうございました」



posted by ゆか at 11:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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