役所で、銀行で、郵便局で、スーパーで、病院で……。
「責任者を出せ!」と顔を真っ赤にして怒り狂う、きちんとした身なりの老人たち。
それまで静かにしていた彼らが、ささいなきっかけで突然暴発。
一方的に担当者を罵倒。
ただ身を縮めて平身低頭する担当者。
5年前、いや、3年前にも見られなかった光景だ。
著者は作家で、家と家族を追うノンフィクション作家でもある。
この数年、日本の社会で起きている変化を3つに分類。
「携帯やネットの発達による時間感覚の変容」。
「住環境の孤立化によるテリトリー感覚の膨張」。
「人格から笑顔を切り離し、感情労働化するサービス業」。
……物事のスピードが速くなり、緻密な時間管理を強制される。
個室化が進んで、無意識に見えない「自分の縄張り」を作って他者を拒む人々。
人と接する職業の人々から人間的な交流が消え、人と人の間を上滑りするのは、丁寧すぎる言葉と精密な作り笑顔。
最近起きている極端な変化に対応できない人、特に現在とは、逆の時代を長く過ごしてきた高齢者が、耐え切れず暴発する……これが、著者の分析だ。
私は、この中の「時間感覚の変容」を、最近特に実感している。
私は中等症持続型喘息……薬がないと日常生活できないレベルの患者。
喘息薬は副作用が強く、医者の処方箋がないと手に入らない。
時々病院に行くが、昔は、午前中を「病院の時間」と考えて、本を読んで気長に診察を待っていた。
……ところが。
このごろ病院の待ち時間が「許せなくなっている」自分に気づいた。
時間帯予約制で、待ち時間はせいぜい1時間半、昔の半分以下なのに。
それさえ、「こんなに待たされた」と被害者意識がつのる。
「突然キレる老人」……この問題は、単に老人世代の問題ではなく、いずれ、どの世代にも起こりうることだと思う。
有効な対策はあるのだろうか。不安だ。
『暴走老人!』 藤原智美 著 文藝春秋
ラベル:高齢者
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