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2007年12月04日

続・グッドデザイン賞と新日本様式

2007年11月22日、新日本様式協議会は、2007年の「新日本様式(japanesque modern)」100選、63件を発表しました。

……「ちょっと待たんかい。100選なのに、全部合わせたら116あるやんけ」というご意見は、さておいて。

今年の「100選」の中から、気になったものを、ちょっとご紹介してみましょう。

木曽漆器工業協同組合の「文化財保護修復の地場産業化プロジェクト」。地域の歴史や文化を再度資源として見直す「エコウォーク」……新日本様式100選にふさわしい活動。

「ガンダムプラモデル・ザクシリーズ」……去年、ニンテンドーDS Lite、ファイナルファンタジー]Uが選ばれて、「ガンダムやポケモンじゃ、いけなかったのだろうか?」と書いたのですが、やっぱり出てきましたか。

映画「時をかける少女」……アニメ映画だったら、2007年現在でもDVDで手に入る「千と千尋の神隠し」でもいいような気がしますが。

「三菱鉛筆uni」……去年「三菱uni硬筆書写用鉛筆六角・三角(『Gマーク鉛筆とJマーク鉛筆』参照)」を新日本様式に選んでおいて、なぜ今年、普通のuniを選んだのかしらん?

田崎真珠「瀑布(BAKUFU)」、コクヨ「カドケシ」……うーむ。弱い。
何が弱いか?
説明です。

新日本様式に選ばれたものは、それぞれのページに写真と解説があるのですが、「日本らしさ」の説明が不足気味。
特に海外の人にアピールするには力不足。

例えば、「瀑布」(滝の意味。大量の真珠をつないだスカーフ状のネックレス)の解説。

『日本人が古くから愛してきた真珠に、新しいファッション性を付加することに成功している』

……「クレオパトラモ真珠ガ好キデシタ」とエジプトの人から反論がありそう。

ここは、日本人が真珠を愛するあまり、世界初の真珠養殖に成功したことを補足しておくべきでしょうね。
ちなみに、養殖真珠の創始者は「ミキモトパール」の御木本幸吉ですが。

そして、「カドケシ」の説明。

『真新しい消しゴムの角を使う「おろしたて」の快さは日本人なら誰もが共感できるだろう』
『市松模様に通じる均整のとれたデザインは、見た目にも美しい』

……「ワタシタチモ新シイ消シゴムノ角ヲ使ウノハ大好キデス」と、諸外国の方から言われてしまいそうだし。
北欧のデザイナーが作ってしまいそうなデザインだし。

ここは「市松模様」の由来、「江戸時代、佐野川市松が、白と紺の碁盤の目のような縞模様の袴で歌舞伎を演じたことからはじまる」を強調するべきだったと思います。

……去年、『グッドデザイン賞と新日本様式』でも書きましたが、新日本様式の選考委員は、もう少し日本の伝統文化を勉強してほしいものです。

さて、新日本様式100選の今後ですが……
かなり混乱している様子が、『新日本様式協議会』サイトの選考委員のコメントからもうかがえます。

『日本らしい文化や技術を継承し、それを継続して新たな価値観を見いだしているものを探しました。文化や技術を継承し新たな考えのものは沢山ありましたが、継続という時間をかけた製品がとても少なかったのが残念でした』(家具デザイナー・小泉誠氏)

……基本的に、すべての日本企業は、どこかで日本文化や技術を継承しているものなんですが。
2007年時点で手に入りやすいものといえば、必然的に新商品が多くなりますし。

『私には新日本様式なるもの正体も見えないままだ』(プロダクトデザイナー・山中俊治氏)

……そんなことでどないすんねん。選考委員に、新日本様式の正体が見えんかったら、一般人は、もっとわからんやんか。

『今後のことを考えると、むしろ100選と限定せずに、進めて行くことが望ましいのではないか。日本から世界に向けて発信出来るジャンルも、もっと広くありそうで、将来的なヴィジョンを踏まえ、より広範囲な対応も必要であろう』(照明デザイナー・石井幹子氏)

……まさか、これから毎年100ずつ、新日本様式を選ぶつもりなのか?

『この審査の対象となるものはきっと何百万点もあることだろう、その中から推薦されてきたものを審査するわけだが、肝心なのは何を審査会場に持ってくるかという段階である。その段階で輪郭線の大枠は決定してしまっている。巷から審査会場に汲み上げてくる機構を確立することが新日本様式百選の生命線であろう』(アーティスト・日比野克彦氏)

……確かに、新日本様式協議会は、日本を代表する大手メーカー、映画会社、百貨店など企業51社、大学・機構・組合など21団体で構成。
会員以外は応募できないわけですから、新日本様式を継続して選定しようとすると、現在の体制では、限界があります。

でも、候補作品を一般公募する……それは「新日本様式のグッドデザイン賞化」でしょう。

グッドデザイン賞は、51年前、デザイン振興と盗用防止と国民生活の向上を目的にスタート。
現在は、エコロジーやユニバーサルデザインなどの世界共通の関心事を意識しながらも、優れたデザインを世界に発信しようとしていますが、評価基準の一つに「日本のよさを感じさせる」というものがあります。

これは新日本様式が「Jマーク」をつけて、世の中に広めようとしているものと同じ。
実際、今年の新日本様式に選ばれた「和傘照明」「新日本軍手」「新幹線N700系」「eneloop(『eneloopの挑戦』参照)」などは、すでにグッドデザイン賞を受賞しているもの。

「JマークとGマークの競合」……これは、まずいことになりそうな気がします。
一般消費者にとって、50年の歴史があるGマークの知名度は絶大。
一方、Jマークは2年目。
選考委員すら選定基準が曖昧。
このまま続けていけば、存在意義すら曖昧なまま、消費者に意識されない選定商品だけが増えていく……。

せっかく苦労して、日本らしさのある優れたものを選定している「新日本様式」なのに、もったいない。
もっと選定した理由、特にその背後にある日本の歴史や伝統の説明が必要なのではないでしょうか。
本当に残念でなりません。
posted by ゆか at 13:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常コラム | 更新情報をチェックする
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