「短刀で、いろんな角度で切り込まれる時に(上から振り下ろすとか後ろに隠して下から切り上げるとか)オススメ技はどれがいいか?」です。
短刀取り……合気道では、相手が短刀で切りかかってきた時に、相手をとりおさえる技のこと。
太刀取り(相手の剣を取り上げる)技や、杖取り(相手の杖を取り上げる)技などとともに、2段や3段の昇段審査に出てくる難しい技です。
さて、この短刀を使う武術、「短刀術」が現われるのは、武芸十八般(『守破離の宿命』(前編)参照)が成立する江戸時代初期。
脇差(侍がさしている2本刀のうち、短い方の刀)を使う小太刀術と、薙刀とともに、女性の護身術とされる懐剣術があります。
『ウィキペディア』(2007.12.12 12:06)によると、短刀術は、「小刀を使う技術」として剣術・柔術各流派で盛んに行なわれていました。
室町時代初期、中条兵庫助長秀が創始した剣術や小太刀、槍術などの総合武術「中条(ちゅうじょう)流」、そして、中条流から分かれた小太刀の達人、富田勢源が創始した「富田(とだ)流」の小太刀術が有名です。
一方、柔術にも、短刀術がありました。
どちらかと言えば、剣術は「短刀で切りつける」技術が中心でしたが、柔術では「短刀を持った相手をとりおさえる」技術が中心。
私が習っている合気道、そして、柔道なども、この「柔術」から分かれたもの。
ちなみに、現存最古の柔術流派竹内流の成立は戦国時代。
天文元年(1532)年、美作国(岡山県)一ノ瀬城主、竹内中務大輔源久盛が創始した総合武術です。
久盛は「この術を身につければ、脇差を帯びたのみで小具足姿と同じように身を護れる」という意味で、この武術を、竹内流小具足腰廻(たけのうちりゅうこぐそくこしまわし)と名づけました。
小具足とは、軽装の甲冑で、脛当て(すねあて)、脇楯(わいだて、右の脇腹を守る鎧)、籠手(こて、)喉輪、(のどわ、首から胸上部を守る鎧)のこと。
竹内流柔術道場のサイトには、小具足腰廻の写真が載っていますが、「短刀を持ったレスリング」に近い形態の武道で、合気道とは、かなり違った姿をしていますね。
そこで、本題に戻って、ご質問のあった合気道の短刀取り技。
『写真で学ぶ合気道』(植芝守央著・ベースボール・マガジン社)には、いくつかの短刀取り技が、紹介されています。
「横面打ち第五教(短刀で左のこめかみを狙われた場合。右手刀で相手の顔面を打ち、左手で相手の短刀を持った手を下からつかみ、右手で手首に関節技をかける)」。
「座技正面打ち第五教(お互いに正座して向き合った状態。相手が短刀を振り上げて面を狙ってきた場合。相手の右側面に一歩入り、短刀を持った手を左手で下からつかんで転換(反転し、相手と同じ方向を向くこと)し、右手で相手の手首に関節技をかける)」。
「短刀取り正面突き肘決め(相手が右手で短刀を持って突いてくる場合。相手の右側面に入って転換、左手で相手の右手首をつかみ、相手の肘に関節技をかける)」。
「短刀取り小手返し(相手が右手で短刀を持って突いてくる場合。相手の右側面に入って転換し、両手で相手の右手首に関節技をかけて投げ飛ばす)」。
……言葉ではわかりにくいと思うので、興味のある方は、ぜひ、この本を読んでください。
かめこさんのご質問、「短刀を振り下ろされた時に対応する技」は、正面打ち第五教(相手の短刀を持った手を、下からつかんで手首にかける関節技)が一般的。
……ここまでは、よかったのですが。
もう一つの質問、「後ろに短刀を隠していて、切り上げられた時に対応する技」。
これが難問でした。
……次回に続く……
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