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2005年10月01日

あまりにも早すぎる死

「ショウナイが早ければ、あと半月、もって1ヶ月の命なので、『会わせたい人があれば会わせてあげてください』と医者が言っているそうです」友人からの突然のメールは衝撃的なものでした。
ガン闘病中だとは聞いていたのですが……

私が『ショウナイ』と呼ばれる彼女に出会ったのは、高校の図書室。
2人とも図書委員で図書室に入り浸りだったのです。

もう1人の図書委員の子と、それぞれの友達が集まった6人がグループになって、高校卒業後も、よくみんなで遊びに出かけていました。
不思議なことに、私たちは「クラスメート」ではありません。

ショウナイは、卒業後、長い交際期間を経て、同じ高校の男性と結婚しました。
彼と私たちは友達だったので、結婚後は彼女の家に押しかけて、彼とその娘も交えて一緒に鍋を囲んだりすることも多かったのです。

その後、それぞれ仕事が忙しくなり、メールで頻繁に連絡を取り合っていたのですが、なかなか集まることができませんでした。

そして一昨年、「ショウナイが子宮ガンで倒れた」と知らされた時は、心底驚きました。
30代にとって「ガンになる」というのは、まったくリアリティのないこと。
彼女は主婦として、家族のために、結婚後も医療事務の仕事に就いて、一生懸命働いていたのに。……

その後「手術成功」と聞かされて安心し、「ガン再発、闘病中」と聞いて再び不安になったりしましたが、現在はガンの治療法は日進月歩ですから、なんとかなるだろうと思っていたのですが……


私たちは急いで集まって、みんなでショウナイの自宅へ見舞いに出かけました。

「すこしでも娘のそばにいたい」
本人の強い願いで、彼女は在宅療養していました。

事情を知らない5歳の娘は「お姉ちゃんたちが来た!」と大はしゃぎ。

部屋には大人用の紙おむつが箱ごと並べられ、テーブルの上には山積みの薬。
彼女はベッドに横たわり、鼻にチューブを通していましたが、意識ははっきりしていて、話せる状態でした。

彼女の夫が、訪問看護の看護師さんがつけたノートを見せてくれました。
彼女の体調の変化や家族へのアドバイスが、細かい字でびっしり書き込まれていて、在宅介護の大変さと、それをサポートする医療関係者の行き届いた心遣いがわかります。

私たちは、娘の遊び相手になったり、同窓生の消息の話を彼女にしたりして、つとめていつも通りにふるまいました。
彼女も、いつもと変わらない穏やかなショウナイでした。

「早く元気になってね。また来るからね」
「うん。またね」

そう言いあって、私たちは、いつもと同じ調子で彼女と別れました。
その「また」が来ないかもしれないことを、お互いに感じながら。


その後、1ヶ月がたち、「ショウナイ危篤」の知らせを受けて、私たちが駆けつけようとする直前、彼女は亡くなりました。

葬儀には大勢の参列者が集まりました。
彼女の仕事関係者、町内会、娘の幼稚園の父兄……生前の彼女の交際の広さがうかがわれました。

穏やかな表情で棺に横たわるショウナイ。
結婚して10年。娘が生まれて5年。
短い生涯でしたが、まわりの人に大切にされて、幸福な人生だったと思います。

彼女の夫は「やれるだけのことはやりましたから」と言って、取り乱すことなく喪主として、参列者に挨拶していました。
彼の横で、わけもわからず、父親のまねをして参列者に頭を下げている娘の姿に、私の心は痛みました。

これから先、男手一つで娘を育てて行かなければならない彼を、私たちも、できる限り支えていきたいと思います。


さようなら。ショウナイ。
どうか安らかにお眠りください。
私たちは、あなたのことを決して忘れません。
これからもずっと……




posted by ゆか at 10:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常コラム | 更新情報をチェックする
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