仕事が終わって帰宅すると、玄関前に中年女性がにこやかな顔で立っていました。
「国勢調査の調査員ですが、調査票をお渡ししておきます」
確かに彼女は胸にそれらしき身分証をつけています。
「この調査票に記入しておいてください。後で取りに来ますので」
差し出された茶封筒を、私は受け取りませんでした。
「後で来られると言っても、仕事とか買い物なんかで家にいない時に来られても」
「いえ、時間を指定していただければ、取りに行きますよ」
「でも、また来てもらうのもなんだし、私も忙しいし。……今回の国勢調査はパスします」
そう言った途端、彼女は青ざめました。
「いえ、それは困ります」
「でも、受け渡しが難しいし……」
気まずい沈黙が続いたので、私は話題を変えてみました。
「ところで、あなたは派遣社員の方ですか? 私は前から、この仕事をしている人が、いったいどんな人なのか、興味があったんですが」
彼女は、ちょっと得意げに、胸の名札を示しました。
「私は町内会の者で、市からの委託を受けて、このお仕事をさせていただいています」
変だなあ。自治会報で『国勢調査調査員募集』の記事は見たことないけど。
名札をよく見ると、調査指導員の名前は男性名。
手に持っている調査票受け渡しリストに書いてある担当者名は、同じ姓の女性名。
どうやら、市が自治会の特定の人間に調査を委託して、その家族が調査票を集めて回っているようです。
「私もやってみたいです。時給とかもいいんですよね?」
「えっ、それはちょっと……」
うろたえたところをみると、結構な報酬があるようです。
ちなみに、ネットで国勢調査の調査員を公募している自治体を調べると、だいたい、50〜70戸で4、5万ぐらいが相場です。
私の住んでいる市は、なぜ調査員を公募しないのかは、謎ですが。
結局、市役所に直接郵送することにして、郵送用封筒と調査票の入った資料整理用袋を受け取りました。
資料整理用袋には、『調査員によって、記入漏れ、記入誤りなどの確認がありますので』とありますが、どんな表現が『記入誤り』になるのか、それを調査員がどう訂正するのか……なんとなく不安です。
『調査票の記入内容を統計以外に使用することはありません』とあるけれども、本当にそうなのでしょうか?
それにしても『勤務地』や『家の総床面積』などの項目は、必要なんでしょうか?
国がバスや電車を増発させて通勤を便利にしてくれるわけでも、広い家をくれるわけでもないのに。
ついでに言うと、来年から日本の総人口は減りはじめるそうなので、そろそろ『新規住宅着工戸数』を景気の指標にするのはやめた方がいいと思いますが。
今回の国勢調査の統計を元に、いったい国は何をする気なのか、なんだか心配です。
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2005年10月04日
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