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2008年01月15日

呼吸の謎(前編) 踵の息・足心の息

今年の正月、実家に家族が集まって、みんなで、おせち料理を食べていた時のこと。ひさしぶりに会った弟が、私のグラスにビールを注ぎながら言いました。

「合気道の昇段おめでとう。これから、2段とか3段とかめざすんか?」
「まあ、2段とか3段とかは、だいぶ先の話やね。合気道やってる目的は、喘息を軽くする丹田呼吸法の習得やから。初段は、そのスタートラインや」
「そやけど、なんで、合気道やねん?」
「は?」

「もし、武道の丹田呼吸法が、みんな一緒やったら、合気道より運動量の少ない弓道の方が、ラクして、早く丹田呼吸法が会得できるんとちがうんか?」

意表をつく弟の言葉。
私にとって「合気道=丹田呼吸法」(『合気道へ』(前編)参照)だったのです。
他の武道で丹田呼吸法を習得するなんて、考えたこともありませんでした。

「いやあ。向き不向きがあるんよ。弓道みたいに、絶対に的の中心射抜かんとあかん武道は、大雑把な私には向いてへんわ」

その場では、弟にそう言ったものの……。

弓道の丹田呼吸法と合気道の丹田呼吸法は同じなのか?

胸の奥でわだかまる疑問を解消するべく、とりあえず、弓道について調べてみましょう。
考えてみると、弓道について、「起源は平安時代。弓を引いて的の中心に矢を当てる武道。国体の種目で、厳格なルールがあるらしい」という程度しか、知らなかったのです。

弓道=弓を引いて的の中心に矢を当てる武道。
それは間違ってはいないのですが……。

全日本弓道連盟は弓道の基本動作を8つに分けて「射法八節」として指導しています。(ウィキペディア、2008.1.13 19:53)

1.足踏み(弓を左手、矢を右手に持ち両拳は腰、両足を揃えて立つ。続いて、的の右手方向を正面にして立つ。そして、両足の爪先を結ぶ線の延長に的の中心がくるように、両足を左右に踏み開く)
2.胴造り(弓の下端を左膝頭に置き、弓を正面に据える。右手は右腰に)
3.弓構え(ゆがまえ、矢を番えて弓を引く前に行う準備動作。弦と矢を持ち、弓を保持する左手を整え、的を見定める)
4.打起し(弓矢を持った両拳を上に持ち上げる動作)
5.引分け(弓を押し、弦を引いて、両拳を左右に開きながら引き下ろす動作)
6.会(弓を引ききり、矢が的を狙っている状態)
7.離れ(矢を放つ)
8.残心(矢が放たれた後の姿勢)

……うーむ。細かい。

しかも、単に的の中心を射抜くだけでなく、姿勢や心構えまで評価の対象になる。
作法と精神性を重んじる点では、弓道は茶道に近いかもしれない。
喧嘩出身の乱暴者の私には向いていない武道ですな。

さて、ここで、基本的な丹田呼吸法の簡単な説明をしておきましょう。(『鍼灸ドットコム・ツボ探検隊』サイト参照)

姿勢は立った状態でも座った状態でも結構。
丹田(下腹)部分に軽く両手をそえます。
口を尖らせて、丹田から空気をしぼり出す気持ちでゆっくりと息を吐く。
お腹と背中をくっつける気持ちで、ゆっくりと最後まで息を吐ききる。
息を吸う時は、丹田にそえた手を軽く意識しながら、丹田をふくらませるイメージで、鼻からゆっくり大きく吸い込みます。
息を吸う時に、肩の力を抜いてリラックスするのがコツ。

丹田呼吸法には、腹筋が鍛えられて下腹が凹む。
便通が整う。
自律神経のバランスの調整。
免疫力、自然治癒力の強化などの医学的な効用のほかに、平常心を保ったり、気力が充実するなどの心理的な効果があります。

この丹田呼吸法には、息を吐く時にお腹を引っ込め、吸う時にふくらませる丹田呼吸法。
息を吐く時にお腹をふくらませ、吸う時にお腹を引っ込める逆丹田呼吸法があります。

合気道の場合は、逆丹田呼吸法が理想と言われているけれど。
弓道の場合は……?

弓道の呼吸法は、『弓道への誘い』サイトが詳しいです。

呼吸法の鍛錬。
最初は、正座して両手を腰に置き、姿勢を正す。
一息深く吸い込み、丹田を膨張するイメージで息をためる。
丹田を膨張させて細く長い息を吐き出す。
息を出し入れしている間も、お腹はふくらませたままで呼吸をします。
慣れると、立ったまま、動きながらでも、これができるようになる。

矢を射る時は、動作の始まりに腹式呼吸で息を吸う。
吸った息をいったん下腹におさめ、みぞおちあたりのお腹を下に落とすようにして、丹田を膨張させる。
動作を終える時に息を吐く。
会(矢が的を狙う時)や離れ(矢を射る瞬間)に、お腹を凹ませれば、その矢は的に当たらない。
……すごいなあ。

薄い紙を鼻頭につけて、紙が動かないように息をする、呼吸法の稽古の話にも驚きましたが、もっと驚いたのは、弓道の呼吸の理想、「踵の息・足心の息」(踵や足の裏で呼吸する気持ちで息をすること)。

丹田呼吸で、肺とお腹に空気が入ってくると同時に、足心からも空気が入ってくると強くイメージしながらする、気持ちの呼吸のことで、足踏み(矢を射る動作の始まり)の時から、弓道場の床に足底がピッタリ吸いつくような感覚を実感できるそうです。

……うーむ。深い。これが「不動心」というものでしょうか。
かなり合気道の呼吸とは違いますね。

合気道は、相手が突きや手刀や木剣や杖などで攻撃してきますし、腕をつかみにもきます。
それをすばやくさばいて、投げ飛ばしたり、関節技をかけたりする武道ですから。
「足裏が畳に吸いつくような呼吸を心がけよ」と、師範に教わったこともないですし。

どうやら合気道と弓道の呼吸法は、かなり違うようです。
では、合気道の呼吸法は……。

……次回へ続く……
ラベル:武道 合気道 呼吸
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