弓道の呼吸法「踵の息・足心の息」は、足の裏が地面とぴたりとつく……
大地と一体になったゆるぎない不動心。
そんな境地をめざしているように思えます。
さて、合気道の場合は「足裏は畳につかず、かといって、足裏が浮き上がりすぎてもいけない。畳と足裏の間に薄い紙があるような気持ちで、すり足で、なめらかに移動するように」と、私たちの師範はおっしゃいます。
それに、飛び受身(宙返りのような受身)にいたっては、体全体が宙に浮いている状態なので、地面と接している部分がまったくありません。
……ということは、弓道と合気道の理想の呼吸法は違うものだということになりますね。
ちなみに、合気道の呼吸法については『佐々木合気道研究所』サイトが詳しいです。
私は、有段者と激しい動きの稽古をした時に、息があがって苦しくなってしまい、稽古の合間に休息して見学することがあるのですが……。
『息が上がらないようにするには、体をつくることと、息と動きが合うような息使いの稽古をすることである』
……ううう。厳しいなあ。
この「体をつくる」というのは、大抵「走ること」をさしている。
私は呼吸器に機能的欠陥(『障壁』(前編)参照)があり、「走る動作すべて」にドクターストップがかかっています。
でも、「息と動きを合わせる稽古」の方は、なんとかなりそう。
『最初は、受身で息使いを覚えるのがいい。まず呼吸投げなどで沢山投げてもらい、受身をとって息の使い方を練習する。相手に投げられる瞬間から、息は少しずつ吐き続け、腹を締め、立ち上がる瞬間に息を出し切る。立ち上がったときは息が腹に充満する。これを繰り返す。投げられて受けを取っている途中で息を吸ってしまうと、腕が崩れたり、肩を打ったり、怪我をするので、吐き続けなければならない。何十回も投げられると疲れてきて、息が上がってくるだろうから、上がらなくなるように、また息が上がらなくなるまで、この稽古をするといい』
……私も、たまに、後稽古で高段者の方に投げていただくのですが、「何十回」とはいかず、せいぜい20回が限度。
「息を吐きながら飛ぶ(受身をとる)ように」とは注意されるのですが……。
喘息患者独特の癖「息が苦しい時、無意識に呼吸を止めながら息を整える」
「いざとなれば、無意識に呼吸運動そのものを「体に負担をかけるムダ」と判断して、無呼吸で動く」のせいで、苦労しています。
昨年秋の昇段審査(『黒帯』(後編)参照)の最中にも、私は無呼吸で動いてしまったらしい。
審査後、師範は「動いている途中に息を止めてはいけません。ゆっくりと息を吐きながら、のびやかに動くことです」と、大変厳しい顔で言われました。
(この瞬間、「ああ、この審査、落ちたな」と思いましたが、合格できて本当によかった)
しかし、『佐々木合気道研究所』サイトには、こうも書かれています。
『初心者はこの練習を「一技一呼吸」ができるまでやるのがよい』
……ああ、情けない。
私は呼吸に関しては「初心者以前」なんですね。
横隔膜を使って腹と肺を鍛える……これが、今後の課題。
『道場の外でやる稽古としては、道を歩きながら次の電柱まで等と目標をきめて、息を止めたり、その目標まで少しずつ息を吐き続けるとよい』
……これは、いいかもしれない。やってみよう。
しかし、弟から突きつけられた最大の謎「なぜ、合気道なのか?」がわかりません。
そこで、私に合気道を勧めた張本人の夫(空手4段剣道3段少林寺拳法3段大東流合気柔術2段柔道初段、空手と剣道の指導員経験あり)に、尋ねてみました。
「なんで、丹田呼吸法を習得するのに、合気道だったの?」
「今頃、なんでそんなこと訊くねん? こないだ、初段取ったとこやんか」
夫は、不審げに訊き返しました。
「正月に弟に会って、「弓道の方が体力いらんから、丹田呼吸法習得やったら、弓道の方が、よかったんちがうか?」って言われたんや。確かに、合気道の方が、運動量多いような気がするし」
「あほ! 何言うてんねん。弓道は集中力を高めるために、走り込みするで」
「げっ! 弓道も走るのか!」
夫は苦笑いしました。
私が長い間、武道に憧れながらも武道ができなかった大きな理由が、武道の準備運動に、ランニングがつきものだったことなのです。
「合気道は、柔軟運動しかせんし、しんどくなったら休んでもええ。自分のペースで稽古積んでいけるから、お前に勧めたんや。ランニングせん武道いうたら、合気道ぐらいしかないからな」
「……消去法で、合気道なのか」
がっかりした私に、にやりと夫は笑いました。
「まあ、ほかにも理由はあるけどな」
……次回に続く……
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2008年01月19日
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