母からのメール。
『あんたの本、テレビに出てたよ』……???
2008年1月30日、NHKで放映された『生活ほっとモーニング』の特集、『闘病記で生きる力を』。
私の書いたアレルギー闘病記『アレルギーと生きる』が、大阪府立大学看護学部の読書会「闘病記を読もう会」の活動の中で紹介されたとのこと。
母は偶然この番組を見ていて、突然、自分の娘の本がテレビでアップになって映ったのに驚いて、私に連絡してきたのですが。
母からメールをもらったのは、放送後だったので、どんな内容なのかは、はっきりわかりません。
現在、全国各地の図書館や病院で闘病記を専門に集めたコーナーが設けられて人気を集めているとは聞いたことがありましたが……。
私自身、NHKから何も知らされていなかったし、『アレルギーと生きる』を、「過去の実績」ととらえていたので、出版後8年経って、突如自分の本が再評価されるとは、思いもよりませんでした。
とりあえず、NHKと大阪府立大学看護学部に、本を紹介のお礼のメールを送ったところ、NHKの番組制作ディレクター。
「闘病記を読もう会」を主催されている看護学部の先生。
本を選んでくださった看護学部の学生さんから、メールをいただきました。
この「闘病記を読もう会」の目的は、先輩患者が歩んだ病気のプロセス、その時々の対処、心情などの学び、これからの医療に生かすこと。
大阪府立大学看護学部の闘病記文庫所蔵の800冊の本から、看護学生さんたちが読む闘病記を選び、週に1回、数十ページずつ全員で順番に朗読して読み進め、議論するもの。
1冊の本を読み終えるまでに1ヶ月以上かかるとのこと。
NHKの取材の時に、偶然読まれていた本が『アレルギーと生きる』だったのです。
『アレルギーと生きる』の朗読は、昨年12月にはじまり、放映されたのは、本の半ばにあたるところ。
今から20年前のアレルギー患者に対する社会的偏見が厳しい時代の話。
ディレクターによると、放映されたのは、私が成人する前に治療を受けていた病院に治療を断られる場面。
この当時、アレルギーは「子供の病気」とされていて、成人した患者を治療するところがありませんでした。
「看護師の対応は信じられないような対応だが、これが現実に起こったことなのだから、重くうけとめなければならない」
「自分が断った看護師と同じ対応をしていないとは限らない。反省」
「小児と成人をつなぐ医療(「成育医療」)の必要性を感じた」
など、番組中でさまざまな意見が出たそうです。
現在、医師不足、緊急医療体制の破綻など、問題の多い日本の医療ですが、患者のことを真剣に考えて、これからの医療に携わろうとする若い人々が大勢いる……。
一患者として、救われるような思いがします。
なお、放送後は「アレルギーの患者の声を代弁してくれる素晴らしい本だ」「アレルギーのことを知りたいので、購入先を知りたい」などの多数の反響があったとのこと。
……うれしいですね。
「闘病記を読もう会」から、番組を録画したものを、私のところへ送ってくださることになりました。
今から見るのが楽しみです。
『どのような病いであれ、そのために苦しむ方にとっての辛さは今も変わりません。また、そういった思いを言葉にして語る力を持ち、広く知らせて下さる方はまだまだ少ないです。だから一層、それらをリアルに伝えて下さっている島村様の本は、かけがえがないものなのだと思います。ですから、8年を経ていたとしても「現在」の問題として読む側はとらえることが出来るのです。有難いことだと、しみじみと感じています。』
……看護学部の先生の言葉は、最近の新風舎バッシング(『アレルギーと生きる』は新風舎出版賞最優秀賞受賞作品)で、「今、自分がのしていることは正しいのか?」と、すこし不安になっていた私に、勇気をくれました。
アレルギー性鼻炎で、つらい少年期を送り、『闘病記で生きる力を』を企画したディレクター。
小児喘息で悩んだ経験を持ち、『アレルギーと生きる』を読書会の本として勧めてくださった看護学生さん。
この本の内容をこれからの医療に生かそうと、真剣に論じ合う看護学部の皆さん。
そして、番組を見ていた母……
さまざまな偶然が重なった今回の出来事は、一つの奇跡なのかもしれない。
皆様、ありがとうございました。
ラベル:闘病記
何より、番組を見たお母さまの殊勲でしょうね。
著者として最も幸福な経験をされたのではないかと思います。「冥利に尽きる」などと古めかしい言葉を思い浮かべてしまいました。