大阪府立大学看護学部の「闘病記を読もう会」の活動と、私が書いた本『アレルギーと生きる』を紹介した番組。
司会はNHKの黒崎めぐみアナウンサーと内多勝康アナウンサー。
乳ガンを克服したアグネス・チャンさんと、虫垂ガンを克服したエッセイストの岸本葉子さんがゲスト。
内容は、全国の図書館や病院で人気を集める闘病記専門コーナー。
闘病記の読者の思い。
闘病記を書いた人の思い。
闘病記の利用を始めた医療界の最新の動きなどの紹介。
同じ病気の闘病記を読んで、生きる力を得た脳出血の男性。
胃ガンで亡くなった父の気持ちを知ろうと闘病記を読む女性。
闘病のつらさを綴って病気と向き合い、詩集にまとめて出版した骨髄異形成症候群の女性。
闘病記を読んでも乳ガン再発の不安を癒せず、自分でガンと生きる工夫を書いて出版した女性。
……そうか。他の人は、病気のつらさと向き合うために闘病記を書くのか。
私の場合、「危険な薬の使用を強制する当時の喘息予防治療ガイドライン VS 喘息薬の副作用事故から唯一自力で生還した島村由花」でしたから。
当時のガイドラインでは、規定量内の喘息薬で副作用事故が起こることも、事故が起きた後、患者が自力で生き延びることも「想定外」。
そのため、内科の主治医をガンで亡くした私は、あちらこちらの医者から診療を拒否され、風邪薬をもらうのにも苦労するはめに。
2歳で喘息を発病した時に「この子は二十歳まで持たない」と言われていましたから、このまま死ぬのはしかたないかもしれない。
でも、あのガイドラインを放っておけば、多くの喘息患者が死ぬ。副作用事故の犠牲者は私で最後にしたい……。
強い願いを込めた、この本は、意外にも医療現場で大好評。
「これほど患者さんが不安を抱えているとは思っていなかった。私たちは説明不足でした」との言葉を、何人もの医療関係者から聞きました。
現在、『日本アレルギー協会』サイトの『患者さんのためのEMB(Evidence Based Medeicine:医学的根拠に基づいた)喘息治療ガイドライン』には、日常生活上の注意、薬の量の目安、使い方や、緊急時の対応などが細かく丁寧に書かれています。
もっとも、『喘息治療ガイドライン』に「EMB」がつくのは、2001年以降ですから、それまでは「医学的根拠に基づいていない」治療ガイドラインだったわけですね。
20年前にくらべると、アレルギー患者を取り巻く社会状況は格段によくなり、患者も暮らしやすくなりました。
私のアレルギーも数値的には「並」になり、喘息以外の症状は、ほぼ治まっていますし、今は、かかりつけの呼吸器専門の病院から、風邪薬も出ます。
さて、「闘病記を読もう会」の活動は15分程度の紹介でしたが、自分の本の表紙の拡大映像。
机に向かった十数人の若い看護学生さんが、真剣な表情で私の本に視線を落し、順番に朗読している様子。
著者としては、なんだか気恥ずかしく申し訳ない感じがしました。
本の感想を語り合い、これからの医療を、より患者本位なものにしていこうと努力する看護学生さんたち。
その中に、高度な医療知識を身につけようと、去年、看護学部に編入された看護師さんがいます。
医療現場の経験を8年積み、「患者の気持ちがわかっている」と自信があったそうですが。
「闘病記を読もう会」に参加して、患者が看護師に伝えていることは、ほんの一部にすぎないことを痛感。
今は、学業のかたわら、患者の気持ちがよくわかる看護師をめざして、訪問看護のお仕事もなさっているとのこと。
……こういう若い人々の存在は、本当に頼もしいかぎりです。
ところで、『ventus』を見に来られた看護学生さんたちが、一番気になったのは、『アレルギーと生きる』の形を変えた続編……『武道系コラム』だそうです。
喘息薬(気管支拡張剤)の副作用事故後、私には、気管支拡張剤を飲むと発作性頻脈(不整脈の一種)を起こす後遺症が残りました。
結局、気管支収縮予防剤とステロイド剤だけで喘息の発作を抑えることに。
でも、どちらも気管支拡張剤ほどには効かない。
薬を許容量限界まで使っても喘息を止められず、夜中に苦しむ私。
見かねた夫が勧めたのが合気道。(『合気道へ』(前編)参照)
武道と病気、一見何の関係もないように思われますが……
実は、私が自力で喘息薬の副作用事故を切り抜けることができたのは、強烈な胸騒ぎと吐き気で、何も知らない私が、気管支拡張剤を致死量まで使うのを阻止した自己防御本能(体の意思)。
ステロイド剤を大量に追加した私の無茶な判断。
そして、夫の武道の技術「ツボを気功で刺激して気道を広げる」でした。
武道には、柔道整復師などに代表される、西洋医学とは異なる体系的な医学知識があります。
敵の急所を突く技術、ケガの応急処置、自分の精神や身体能力を高める知恵が一体になって発達したためでしょう。
武道では、体や精神を鍛えるとともに、体に負担をかけない合理的な動きや、人間の持つ潜在的な力を引き出す方法も学ぶことができるのです。
古武術家の甲野善紀氏が、高齢者の身体介護を楽にする、古武術の動きを応用した介護術の確立をめざす一方、武道の達人の合理的な動きが科学的に解明されはじめました。
武道と医療、「体」を扱う異なる技術が、「健康」をキーワードに近づきつつあるのです。
「合気道には、免疫力を高め、精神を安定させ、喘息を軽くする丹田呼吸法がある。まずは5年で初段。それが丹田呼吸法習得のスタートライン」
……夫の言葉です。
これ以上薬は使えない。
民間療法、健康食品、漢方薬……全部失敗。
藁にもすがる思いで合気道をはじめた私。
師範をはじめ、指導員の高段者。
空手4段剣道3段少林寺拳法3段大東流合気柔術2段柔道初段で、空手と剣道の指導員経験がある夫。
有段者や同門の先輩後輩たちの支えで、6年目で合気道初段合格。
ようやくスタート地点に立てました。
これからも自分なりに、合気道を中心に、武道の「自らを持つ力を高める技術」について調べていきます。
自分のために。
技がうまくなりたい合気道家のために。
そして、武道を知らない人にも武道の魅力を伝えるために。
ところで、『アレルギーと生きる』は新風舎出版賞受賞作。
詐欺で訴えられ、破産した新風舎に対するバッシングで、「新風舎と関わったのは人生の汚点」と言われた時には、さすがに落ち込みました。
「あんたは書くことが天命だ。天職なんて甘いもんじゃない。どんなに嫌がろうとも、天は無理矢理にでも、あんたに書かせるだろうよ」
……かつて出会った占い師の言葉をかみしめていた時に、バッシングを否定するかのような番組放映……。
「あんたは、やたらに絶体絶命になるけど、突然助っ人が乱入してきて一件落着。絶体絶命と奇跡の大逆転がセットになってる人だ」……。
また、占い師の言葉を思い出しました。
この貴重なご縁を大切にしたいと思います。
面白いことに、番組の中で、『アレルギーと生きる』を読んだ看護学生さんが言っていた言葉、「見えてない世界を知ることができました」……
これとまったく同じ言葉を、武道系コラムを読んだ武道家の皆さん、そして、武道を全然知らない方々から聞いています。
書くことで「見えてない世界を伝える」……これが私の使命かもしれません。
ラベル:アレルギー
島村さんの闘病記の語りからアレルギーと共に生きることの困難さや辛さ、乗り越えるための術などを知ることができました。ありがとうございました。
私は、少し臨床を経験し府大に編入しました。島村さんの語りから、自分自身の臨床経験を思い出し、「患者さんにどれだけ関心を持ち接することができただろうか?」「患者さんにどれけ寄り添い、その方の語りに耳を傾けることができただろうか?」いろいろな場面を振り返り、反省し、時には落ち込んだりしています。
私は、まだまだ未熟な看護師です。私にとって闘病記の一冊一冊が先生であり、人生の先輩です。医療において、科学的な根拠も重要です。しかし、闘病記の語りには、科学的な根拠では語れない重要な要素を強く感じます。
これからも闘病記を読んで患者さんの語りに触れていきたいと思います。
先日、島村さんとご主人の恋話の章を朗読しました。微笑ましい光景とバトル場面など楽しませて頂きました(^0^)/
私も恋をした!なんて気分にさせてもらいました。
大学は春休みに入りましたが、今週も朗読会は続きます。とても楽しみにしています。(暗黙の了解で朗読中の本の先読みはできません)
闘病記で島村さんと出会えて感激です。学生生活の貴重な経験をさせて頂きありがとうございました。
まだまだ寒いです。体に気をつけた下さい。
大阪府立大学3年
有井千恵