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2008年03月11日

私にゃわからん世界?

「まずいことになったわ……」
2月に入って、しばらくたったある日、夫は暗い顔で、私に言いました。
離れたところに住む義母のことです。

義母の住む市には設備のよい大病院がないので、住民は、電車やバスを乗り継いで他市の病院へ通っています。
義母は人工透析を受けるために、介護保険を使って、介護施設からのバス送迎サービスを受けていたのですが、今月から送迎できない……なんで?

しかも、人工透析をしていた病院の院長が交代。
新院長は、ガン治療に力を入れる方針で、3月末で人工透析外来を閉鎖。
患者は他の病院へ移るように……ちょっと待ってよ!

簡単に「よその病院へ移る」と言っても、もちろん、義母の自宅付近の病院ではないわけで……そんなところへ、果たして自力で通えるのか。
人工透析は体力を消耗します。
透析終了後、しばらく病院で休み、ふらふらしながら電車やバスを乗り継いで帰宅……途中で交通事故にでも遭ったらどうする。

義母本人は、「市や病院が、できんもんはできん、言うんやから、しゃあない。病院から、提携してる透析クリニックを、いくつか紹介してもらえるし」と言いますが……。

遠距離介護をしている人々の家庭には、家庭ごとに独特の「事情」があります。
我が家の場合は、私たちの心配と、義母本人の意向、親族や病院や介護施設の思惑が錯綜して、膠着状態のまま15年が経過……そういった感じ。

幸い、送迎バスを出してくれるクリニックがあったので、義母の転院先は、そこに決まりました。とりあえず一安心。

ですが、なぜ突然、通院送迎サービスが停止されたのか……。

義母は「市の決定でどうしようもないねん。市の人も施設の人も、心配してくれたんやけど。しゃあないねん」と、なんだかよくわからないことを言います。
「市が決定した」のに「市の人が心配する」……どういうことでしょう?

義母の介護保険認定は半年に1度。
今回の認定で何かあったのか?
それとも、あの介護施設(『あなたの知らない世界?』参照)が、何か問題を起こして、コムスンのように営業停止になったのか?

一番恐ろしいのは、猫の目のように変わる介護保険ルール。
2006年の改定で、義母は病状が変わらないのに、「要介護2」から「要支援」にランクを下げられています。
「要支援」より下のランクはありません。
今後ルールが変われば、最悪、介護保険の再申請……2004年の申請は、申請途中で夫が過労で入院するほど、大変な作業でした。これを繰り返すのはつらい。

それに、介護施設のサービスを受けられないということは、ある意味、介護施設がしていた「見守り」をする人がいなくなってしまう。
私の住む市にくらべて、義母の住む○○市は行政福祉サービスが非常に遅れているので、やっぱり心配です。

事情を知るために、○○市介護保険課に電話することにしました。

介護保険は市町村単位で運営されているため、市町村ごとに微妙にサービスが違います。
私の住む市では、ホームページで介護保険関連の各サービスを詳細に紹介。
広報誌やケーブルテレビ広報番組など、色々な手段で、市民に介護についての情報を提供しています。
○○市のホームページには、介護保険関連の説明がほとんどなく、「詳しいことは介護保険課へ」とあって、連絡先の表示があるだけ。
情報開示も遅れています。

さて、介護保険課に電話すると、男性職員が電話に出ました。

「主人の母のことで、お電話しました。介護保険認定の担当者をお願いします」
「私が担当ですので、お伺いしましょう」

自信満々に言いきった職員に、私は義母の介護保険被保険者番号を告げました。
ところが、通院送迎サービスを打ち切った理由を尋ねたとたん、職員の態度が急変。

「え、えっと……ちょ、ちょっと待ってください。今、詳しい担当者につなぎますんで」

……あんたが担当なんとちがうんかいな?

しばらくして、電話に出たのは女性。「地域包括支援センター担当職員」と名乗りました。

地域包括支援センター……2006年4月1日の介護保険法の改正で創設された機関。
保健師、看護師、社会福祉士などが常駐。
中学校の校区を一つの単位として、地域住民の心身の健康維持や生活の安定、保健・福祉・医療の向上、財産管理、虐待防止など様々な課題解決に向けた取り組みをするもの。

私たちが介護保険の申請をしたのは2004年。
地域包括支援センターの人と直接話をするのは初めてです。

義母の2月の介護保険認定で、介護度のランクが「要支援2」から「要支援1」に下げられ、送迎サービスが受けられなくなったこと。
介護保険そのものが無効になったわけでなく、再申請は必要ないこと。
本人は自立できるけれども、透析をしている障害者なので、介護施設のケアマネージャーと連携して、定期的に義母の「見守り」をしていること。

……女性職員は穏やかな声で説明しました。なるほど。
義母の言う「心配した市の人」というのは、彼女のことですね。

地域包括支援センターの運営は、自治体主体が基本ですが、自治体によっては、民間の介護施設、NPOなどに事業を委託しています。

私たちの市では、7つの地域包括支援センターの運営を福祉法人に委託。
主な業務の説明や各施設の所在地、担当地区一覧や連絡先まで、ネットで知ることができますが……。

義母の担当職員が何者なのかはわからないけれど。
介護施設の担当ケアマネージャーの名前を知っていたし、義母の転院先の病院も知っていたし。
定期的に義母の家に訪問してくれているようなので、たぶん大丈夫でしょう。

『国立社会保障・人口問題研究所』サイトの「高齢者関係給付金推移」によると……。

調査開始の1973(昭和48)年当時は、年金保険給付費が10,757億円。
老人保健医療給付費が4,289億円。
老人福祉サービス給付費が596億円。
合計15,642億円。

2005(平成17)年度は、年金保険給付費が446,690億円。
老人保健医療給付費が106,669億円。
老人福祉サービス給付費が62,465億円。
高年齢者雇用継続給付費(1995年新設)が1,256億円。
合計617,079億円。32年で40倍!

今年の4月からは「後期高齢者医療保険制度」がはじまり、高齢者の負担がさらに増えます。
国の財政データを見ると、ある程度の負担増はしかたないのかもしれませんが、介護保険や高齢者福祉制度は、改正のたびに、利用者にとって、どんどん不透明なものになっていく。

……なんとかならないものでしょうか。
ラベル:介護保険
posted by ゆか at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常コラム | 更新情報をチェックする
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