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2008年03月15日

AIKI(前編) 武田惣角と植芝盛平

「大東流合気柔術の人が、「大東流は合気道とは違う武道だ」と言うのですが、どう違うのでしょうか?」
 
養神館合気道を稽古されている、やままさんから質問メールをいただきました。

「大東流と合気道は違う」……大東流合気柔術2段の夫も、そう言います。

私は初めて夫に会った頃、「大東流合気柔術はどんな武道?」と尋ねて、「合気道みたいなもんや」という返事が返ってきたので、大東流は合気道の流派の一つかと思っていたのですが。

実際に合気道をはじめて、合気道の技と夫の大東流の技の話をしていると……大東流と合気道は別の武道のような気がしてきました。

例えば、「小手返し」「四方投げ」などの投げ技の話は通じるのに、固め(関節)技の「一教」や「二教」などの話題になると、とたんに話が通じなくなります。

前に、夫と「正面打ち一教(手刀で自分の面を狙ってきた相手を、手刀でさばいて、関節技をかけて制する)」の話をしていて、実演してみせると……。

「ほほう。合気会では、その技を一教と呼ぶのか。大東流でも同じ技があるわ。で、敵を固めるだけなのか? 突いたり蹴ったりして、とどめはささんのか?」と訊かれました。

「「固めて、残心(相手に反撃させないように用心すること)して、相手が反撃してこなければ、それでいい」と師範はおっしゃるけど」
「まあ、理想はそうやろけど。……合気会は、おとなしいなあ」

夫は苦笑しましたが。

……「理想主義の合気道、現実主義の大東流」なのでしょうか。

以前、「相手が隠していた短刀で斬りつけてきた場合の対処」として、合気道3段の有段者と、大東流2段の夫に短刀取り技を実演してもらいました。(『短刀取り』(後編)参照)

両方とも「短刀をよけて相手の側面に回り込み、関節技をかける」という点では同じでしたが……。
合気道は相手の動きに逆らわず、流れに乗って一瞬でかける関節技。
大東流は相手の動きを封じて、相手を力でとりおさえる関節技。

合気道の技は、その速さに驚き、何がなんだかわからない間に「ひょい」と技をかけられます。
一方、夫に大東流の技で「ガコッ!」と腕を取られた瞬間には背筋が凍りました。

技そのものは「直線的・能動的な大東流」。「曲線的・受動的な合気道」の印象。

さて、『ウィキペディア(2008.3.11 17:35)』によると、大東流合気柔術の流祖は、源義家の弟、新羅三郎義光(源義光)とされています。
この武術は、会津藩御留流(門外不出の武術)として伝えられてきました。

明治30年(1897年)、武田惣角氏は、霊山神社の宮司の保科頼母氏(西郷頼母)から、この武術の技法を伝承し、それを体系化。
全国を回って大東流合気柔術を普及させました。

そのため、大東流合気柔術は全国各地に多くの諸会派があります。
北海道網走で武田惣角氏の三男、武田時宗氏が創始した大東流合気武道。
東京都小平市で佐川幸義氏が開いた大東流合気武術。
北海道北見市で堀川幸道氏が組織した幸道会。
大阪で久琢磨氏の弟子たちが組織した琢磨会などなど……。

夫の大東流合気柔術は、琢磨会の系統だそうです。

久琢磨氏は大阪朝日新聞社の道場で、植芝盛平翁から大東流合気柔術を学び、後に武田惣角氏から免許皆伝を授けられた方。
大阪朝日新聞記者だった琢磨氏は、植芝盛平翁と武田惣角氏から伝えられた技法を写真で記録。
貴重な資料を残しました。

……この後、植芝盛平翁は、より「合気」を平和的に使うことはできないかと考え、合気道を創始することになるのですが……。

『大東流合気柔術琢磨会神戸本部』サイトによると、大東流の技の総数は2884。

技は座り技、立ち技、半座半立、後技、投げ技、固め技、武器捕りなど。
……合気道と共通する技が多いですが、大東流固有の技、合気道固有の技もあるので、全部同じというわけではないようです。

使われる「合気」には心の動きなどを利用して投げる合気技と、関節の逆手経絡人体の運動法則を利用して投げたり、固めたりする関節技、急所攻めがある。
……合気道では、「関節の逆手経絡人体の運動法則を利用する」のは、関節技で固める時に、手でおさえる場所が人体の急所だと教えられていましたが。
相手を制する時以外に積極的に使うことはないので、このあたりが大東流と合気道の違いかもしれません。

体さばきは剣を基本とする理合、型稽古中心……これは、両方とも同じです。

初級者は受身と、基本技初伝118手の一ヶ条居補の稽古。
中級者以上は合気柔術、呼吸法、力の入れ加減、体の崩しの研究。
上級者は、応用動作、合気投げ、敏捷な技の対応へと研究が進む。
……同じ技を初心者と有段者が一緒に稽古する合気道とは、違いますね。

大東流の一会派の琢磨会と、合気会をくらべただけで、これだけ違いがあるのです。

合気道と同じように、大東流の会派でも、道場によっては試合をするところ、武器技を重視するところと、色々なスタイルがあるので、やっぱり「大東流と合気道は別の武道」と、私には思えるのですが。

ところで、先日テレビ放映された「AIKI」。
加藤晴彦演じる車椅子の青年が、大東流合気柔術にと出会い、人間的に成長していく映画ですが……。
録画に失敗してしまいました。
夫婦で残念がっているところに、ちょうど、やままさんからご質問があったので、DVDを借りて、あらためて夫と一緒に見ることに。

「AIKI」に協力しているのは、大東流合気柔術六方会。
北海道・幸道会の堀川幸道氏の高弟、岡本正剛氏が組織した団体です。

北海道の大東流合気柔術の映画を、合気道開祖を知る関西の大東流合気柔術琢磨会の人間と、現在の合気道を学ぶ合気会の人間が見る。
……なんだか妙なことになってきました。

……次回へ続く……


タグ:合気道 武道
posted by ゆか at 11:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 武道系コラム | 更新情報をチェックする
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