この本は、時代とともに変遷する世相と言葉の関係を、文法から科学的に分析したもの。
著者は『日本国語大辞典』の元編集長。
早稲田大学文学部国文科卒の国語の専門家だ。
私も国文卒で古文や文法については割と詳しい方だが、言霊信仰(口に出して言ったことが実際に起こるとする日本古来の思想)を抜きにすると、世間の人が思っているよりも、日本語には論理的な法則性があり、意外と科学的なものだ。
「○○円からお預かりします」は消費税導入後に広まった。
これは店の人が、代金のうちの消費税を一旦預かって後で納税するので、この使い方は意外と的外れではない。
「私的」の違和感について。
元々「的」は明治時代に英語の「……tic」を日本語に訳したもので、「悲劇的」「組織的」など「漢語+的」が普通だった。
現在の「私的」は「as for me」。
同じ用法であらゆる言葉に「的」をつける使い方が広まり混乱している。
さらに「曽」の字を命名に使えない戸籍法(名前に使えるのは当用漢字表と人名用漢字別表の字と、平仮名と片仮名で、「曽」の字は表にない)を「違法」とした平成15年の最高裁判決を例に、役人の介入が日本語を混乱させることを指摘。
「新しい文化を先導するのは新しい言葉」と、辞典の編集者としては柔軟な考え方をしている著者だが、「漢字仮名混じり文の詞(漢字部分)にあたる言葉は、カタカナ語やローマ字になっても日本語は変質しないが、辞(平仮名部分)の助詞(てにをは)や助動詞をないがしろにしては、日本語はダメになる」と心配している。
私も同感だ。
文法用語がたくさん出てくるが、なかなか面白い本だった。
『日本語から日本が見える』 倉島長正 著 東京新聞出版局
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