「君は隙だらけだぞ。わはははは」大抵の武道には「返し技」というものがあります。
相手がかけてきた技を利用して、逆に相手に技をかけることで、柔道のTV中継ではよく見られるもの。
私はよく返し技をかけられるし、たまに初心者相手に返し技をかけることがあります。
最初に返し技をかけられたのは、合気道をはじめて1年。昇給審査で5級に合格した頃。
相手は初対面の年配の有段者で、技は「正面突き入身投げ(相手が拳で突いてくるのを、横によけて相手の後ろに入り投げる技)」。
有段者(受け)が右の拳で突いてきたのを、私(捕り)が右に動いてよけ、私が有段者の右側面に入った……まではよかったのですが。
有段者の右肘が飛んできて、とっさに平拳で払いのける私。
次の瞬間、私の背後に回り込んだ有段者は、私の右手をつかんで前方に放り投げる。
「しまったぁ!」
前方に転がるように受身を取って、私は怪我をせず、なんとか立ち上がりました。
「今の技、よく受身取れたな。はははは」
技をかけた有段者は大笑いするけれど、もし受身を取れなかったら大怪我。
実際に怪我をすることも多く、返し技を禁止する道場もあると聞いたことがあります。
合気道の稽古は捕り(技をかける人)が、きちんと技のかけ方を覚えられるように、受け(技をかけられる人)が協力するのが基本。
だから、技をかけられる側が、逆に技をかけて投げ飛ばすのは、明らかなルール違反。
合気道を「スポーツ」とすると返し技禁止となりますが、合気道が「武道」だと「隙がある方が悪い」ので返し技をかけてもよいことになり、この解釈が難しい。
私の通う道場では、一応「返し技は好ましくない」とはされているのですが、男の有段者は「教育的指導」として、たまに返し技をかけることがあります。
でも、返し技は誰にでもかけてよいものでもなくて、かけてもいい人は「ある程度受身の型を覚えて、予期せぬ動きにも対応できる鋭い反射神経があって、返し技をかけられたことを根に持たぬ人」という条件があります。
普通、返し技で狙われるのは3級以上からで、どちらかと言えば、女性はかけられることが少ないようなのですが……
私の場合は、返し技をかけるとリアクションが面白いらしく、よく有段者に狙われます。
例えば、スポーツ教室で初心者と組み手をしている最中、師範が後ろからやってきて、「姿勢が悪いとこういう目にあうんだよ」と、いきなり合気落とし(後ろから相手の両肩をつかんで真下に落として崩す技)をかけました。
「しまったっ! こういう目にあってしまった!」と叫びながら受身を取っていると、師範は大笑いしながら去っていきました。
私に隙があるから仕方ないですね。
ところで私は、最近、後ろ受身が取れる程度に上達した初心者を教える時、指導方法として、返し技の応用を使うことがあります。
初心者が技をかけている時に、その手を引っ張って体勢を崩すだけでも、初心者は驚きます。
「腰がひけているからです。手だけで相手を投げようとしましたね。もっと体全体を相手に近づけて技をかけましょう。では、もう一度。私はさっきと同じように手を引っ張りますよ」
そう説明して、説明通りに初心者が技をかけると、私が手を引っ張っても、初心者の体が安定していて体勢が崩れない。
「よくできましたね」
そうほめると、初心者はうれしそうです。
このやり方は「わかりやすい」と初心者には好評なのですが、年配の有段者は「口で稽古し過ぎる。技は見て盗むもんだ」と言うので、少し困っています。
先日、夫(武道13段)に、「最近、よく返し技をかけられるんだわ」と言ったら、「それで、お前は投げられっ放しなんか。茶帯(上級者)のくせに、切り返し(相手の返し技に対して、さらに返し技をかけること)もできんとは。ちょっとそこへ座れ!」
リビングに正座させられて、「ちゃんと身入れて稽古してるんか!」と15分ほど説教されました。
返し技は奥深いものらしい。
いずれは「隙あり!」と返し技をかけられても、うまく切り返せるような上手な有段者になりたいものです。
……次回へ続く……
新着記事
(04/18)「逆転の発想」のファイル
(04/11)『仕事ができる人になる 図解の技術大全』
(04/04)25年3月度アクセス解析
(03/28)『まさかの税金』
(03/21)『社会保障のトリセツ』
(03/14)春のノート選び
(03/07)25年2月度アクセス解析
(02/28)春のかわいい文具
(02/21)本当に「使える文具」2025
(02/14)『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』
(02/07)25年1月度アクセス解析
(01/31)進化した「ラベル魔」
(01/24)手帳のスリム化
(01/17)災害手帳術
(01/10)身近な老舗文具企業
(01/03)24年12月度アクセス解析
(12/27)こだわりの「おそうじ」文具
(12/20)2025年の手帳時間
(12/13)『基軸通貨 ドルと円のゆくえを問い直す』
(12/06)24年11月度アクセス解析
(04/11)『仕事ができる人になる 図解の技術大全』
(04/04)25年3月度アクセス解析
(03/28)『まさかの税金』
(03/21)『社会保障のトリセツ』
(03/14)春のノート選び
(03/07)25年2月度アクセス解析
(02/28)春のかわいい文具
(02/21)本当に「使える文具」2025
(02/14)『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』
(02/07)25年1月度アクセス解析
(01/31)進化した「ラベル魔」
(01/24)手帳のスリム化
(01/17)災害手帳術
(01/10)身近な老舗文具企業
(01/03)24年12月度アクセス解析
(12/27)こだわりの「おそうじ」文具
(12/20)2025年の手帳時間
(12/13)『基軸通貨 ドルと円のゆくえを問い直す』
(12/06)24年11月度アクセス解析
2005年11月08日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック
にほんブログ村ランキング