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2008年04月01日

異変? 手帳売り場

さて、いよいよ新年度もスタート。今年も『第二の手帳シーズン』たけなわかと思いきや……。

繁華街の百貨店、ハンズ、Loft……なぜか閑散とした手帳売り場。
フランクリン・プランナー手帳のプロモーションビデオの音声だけが、うつろに響いています。

もちろんネット文具店各社は、4月始まり手帳を売り出しているのですが、去年ほど活気がない。
1月始まり手帳の在庫も、まだあるありさま。
『ほぼ日刊イトイ新聞』サイトも、「4月始まりほぼ日手帳大売出し!!」の勢いがもないし……なんか妙だなあ。

ちなみに、ほぼ日手帳コーナーでは、4月始まり手帳をお勧めする人々として、小さい子共のいるお母さん、新社会人、学生、学校で働く人、新年度を迎える社会人、就職活動中の人を上げていますが……。
私だって、新年度を迎えるけれど。
仕事の年度末繁忙期は、必ず4月上旬までずれ込んでしまう。
4月1日を境に突然生活が変わるわけではないので。

毎年10月に、1月始まりのシステム手帳リフィルを買って1年使う生活をしていますが。
去年の10月の手帳売り場の活気は、その前の年と変わらなかったと思う。
去年の4月に手帳を買った人がみんな、秋に1月始まり手帳に切り替えたようでもないし。

原油価格の高騰で、紙製品も値上がりがはじまっていますが、手帳がいきなり倍の値段になったわけでもないし。
手帳ユーザー数が減ったのかなあ?

フランクリン・プランナーや夢手帳が現われ、手帳ブームがはじまって5年目。
ひょっとしたら、「夢を手帳に書けば叶う」というメーカーの魔法がとけはじめているのかも。

目標を設定し、細かいスケジュールを定めて、それに基づいて動いていく。
忙しければ忙しいほど充実しているような気がする。
確かに、私もそんな感覚に陥っていた時期があります。
忙しくて、目先のことで手一杯になれば、将来に対する漠然とした不安を感じなくてもすみますから。

「3年間、フランクリン・プランナー使ってみたけど、自分の夢は実現していない」と気がついた若者たちが多いのかもしれません。
それとも「手で字を書くこと、手帳に記入することそのものが億劫」とか……。

私も心あたりがあるのですが、文章を書く時、手で書くよりも、キーボードで打つ方が気楽なのですよ。
下手な自分の字が嫌いということもあるのですが。
紙に書くと、簡単に消去できないし。
目の前に何も書いていない紙があって、「さあ、なんでも好きなことを書きなさいね」と言われたら、ちょっととまどうと思います。

実は、自分の今考えていることを紙に書くには、それなりの時間とエネルギーが必要です。

「単にスケジュール管理だったら携帯でいいや」という考え方も合理的ではあるのだけれど。
携帯にスケジュールを入力する方が、手帳に予定やアイデアを書くより気楽かもしれない。
しかも、携帯は手帳より小さくて軽く、多機能です。

ただ、「紙に書く」行為は、時に劇的な効果を発揮します。

2004年夏、義母が倒れ、私は単身、市の介護保険課に出向きました。

「介護保険の申請の手続きを教えてください」

そう言った私の目の前に出されたのは、A4の白紙。
窓口担当者が「誰が倒れたのか」「入院先」「家族の様子」「親族の援助は受けられるか」「現在仕事をしているか」など、一つ一つ細かな質問を重ね、その答えを紙に書いて、私と担当者がお互いに確認し合って話を進めていくと……。

私自身は漠然と「介護保険の手続きを知りたい」と介護保険課を訪ねたのですが。

意外なことに、私が本当に知りたかったのは「遠隔地にいる義母が倒れ、仕事しているし、親族の援助も望めないので、介護保険を申請したい。しかし、夫はパニック状態で申請に反対している。どうしたら夫を説得できるか?」という点でした。

「しんどいでしょうけど、仕事は絶対に辞めないでください。介護に専念したら虐待が起こる確率が高いです。男の人は大抵、親御さんが倒れるとパニックになります。でも、半月ほどすると介護保険申請を考えはじめますから、もうすこし待ってください」

それが担当者の答え。
介護相談に来る人のほとんどが、半狂乱状態で意味不明なことを窓口に訴えるため、カウンセラーの指導で、相談者と担当者が、相談内容を一つ一つ紙に書き、確認しながら相談を進めるマニュアルを作成したのだそうです。

「これまで相談に来た人の中で、一番若く、一番冷静な人ですね。あなたがしっかりしているから、大丈夫ですよ」と、担当者にほめられましたが……。 
このマニュアルがなければ、たぶん、私も、見当はずれな答えを持ち帰って、もっと家庭が大混乱していただろうと思います。

というわけで、「手で字を書く」というのは大事なことなのですが、私もあまり手で字を書くのが好きではありません。

『書写の授業は楽しかったですか? なぜ楽しかった/楽しくなかったのでしょうか? 手で字を書くことは好きですか? 好きになるにはどうしたら良いでしょう? 字を書くことに自信がありますか?』……。  

『上越教育大学押木研究室』サイト、書写教育がご専門の押木準教授の言葉は、ぐさりと胸に刺さります。

書写の授業は楽しかったですか?……大嫌いでした。
なぜ楽しかった/楽しくなかったのでしょうか?……毛筆は墨をこぼし、ペン習字は力余ってペン先を二つに割ってしまい、よく先生に叱られたので大嫌いでした。

手で字を書くことは好きですか?……嫌いです。字が下手なので。
好きになるにはどうしたら良いでしょう?……筆圧が、あまり影響しない油性ボールペンや6B鉛筆で字を書くこと。そして、もっと字がきれいになれたらいいと思います。
字を書くことに自信がありますか?……ありません。冠婚葬祭の芳名帳などで、自分の字の汚さが恥ずかしいので、せめて、自分の名前と住所と数字は、きれいに書きたいです。

結論。
私の場合、「筆圧が高くても書きやすい鉛筆か油性ボールペンを使い、自分の住所氏名数字をきれいに書ければ、手で字を書くことに抵抗がなくなる」
……解決。

ところで、最近読んだ『NOTE & DIARY Stylebook vol.2(エイ出版)』は、美しい写真でノートや手帳、メモなどの楽しい使い方を紹介した本。
今回は、紙そのものの書き味の比較や、旅行、料理、ワインなど、分野別に分かれたライフスタイル・ノートの紹介。
繊細な模様の便箋、瀟洒な和綴じのノートなどなど……。
しばし、夢見心地でページをめくっていたのですが……。

「実用品だったノートや手帳は、万年筆のように「趣味の雑貨」になりつつあるのではないか」

そんな思いが頭の中をかすめ、不安になりました。

せっかく、多彩で良質な文具が豊富に、しかも割安で出回っていて、自分の好みに合った紙、ノート、メモ、手帳があって、好みの筆記具を選ぶこともできるのですから。
「自己実現ツール」の枠をはずして、もっと気楽に手帳を使えたらいいなと思います。
ラベル:手帳
posted by ゆか at 13:53| Comment(1) | TrackBack(0) | 文具コラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
手帳はもともとの趣味的なアイテムという側面と、最近注目されるようになった目標実現のための道具という両方の面がありますね。

後者としては一連の夢手帳があるわけですが、前者の流れをうまくとらえたのがあの、ほぼ日手帳なのではないかと考えています。
Posted by 館神龍彦 at 2008年04月11日 07:37
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