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2008年04月15日

観照(後編) 意外な結論

さて、道場から『2007年秋昇級昇段審査』のDVDを借りてきました。
  
「自分の失敗を見ることは、それはそれで勉強になるもんや」との夫の言葉で、「世紀の大失敗演武」の映像を見ることへの抵抗は、すこし薄れたけれども……。
これを見た夫の反応……どうでしょうか?

考えてみると、夫は、私が合気道の稽古をしているところを、実際に見たことがないのです。
家で時々、足さばきなどは見てくれているのですが……

映像を見た後、リビングに正座。1時間の説教。厳しい宿題……ならまだしも。
映像の最初から最後まで大笑いされたりしたら、それこそ立ち直れない。……怖いなあ。

私は台所で、遅い朝食を作っている夫に、声をかけました。

「ええっと、申し訳ない」
「なんや」
「昇段審査のDVD見ることになったんで。一緒に見てほしい」
「長いやつは嫌やで」

包丁で葱を刻みながら、面倒くさそうに答える夫。

「いや、5分もかかってないと思う。今回はリクエストで、一緒にDVDを見て、ぜひとも私を叱ってほしいそうや」

夫は包丁を握った手を止めました。

「ほほう。それは面白いわ。……後でつき合うたる」

夕食後、いよいよDVD鑑賞。
きちんと編集されていて、映像は鮮明。
内容は合同稽古と、最初の5級から順に3段までの昇級昇段審査。

「初段のところだけ見てくれればいいよ」と私が言ったのに、夫は「最初から見る」と言います。
テレビの道主・植芝守央先生の『スポーツ講座・合気道』以外の合気道の演武は、ほとんど見たことがないそうなので。

最初が合同稽古前半部の映像。
師範の演武とご指導があります。

「これがお前の師範か……」

師範の動きの一つ一つを、食い入るように見つめる夫。

合同稽古前半終了。そして、5級の昇級審査から順に見ていって、ついに初段昇段審査。
私は自分の演武の映像を見るのは初めてなのですが……。

最初の技、「正面打ち入り身投げ」。
いきなり、相手に腕をむんずとつかまれ、力づくで振り回され、顔面から畳に叩きつけられる私。
もちろん受身でダメージは防いでいますが。
思わず目をおおう状況。

投げる時も、相手が重すぎて「よっこらしょ」と投げている。
合気道の理想「優雅な技」とは、ほど遠い動き。ダメだなあ。

次の技、「正面打ち一〜四教」。
相手に力いっぱい関節技をかけられていて、かなり痛そう。
自分では、受けをとるのに夢中で、それほど痛みを感じていなかったのですが。

ここで、気になるのは自分の動き。
師範の教え通り「丸く柔らかくゆっくり」動いているつもりだったのに、それぞれの動きが直線的で、しかも早い。
技は、それなりに決めてはいるのですが……
しかし、この動き、どこかで見たような……???

中盤の選択技、「正面突き小手返し」「片手取り四方投げ」「片手取り回転投げ」では、静まりかえった道場の中で、畳を打つ音と、私と相手、お互いの「ゼイゼイ」という激しい息づかいが響くだけ。
……この時点で、私の肉体的なダメージは、かなりのものだったようです。

それにしても、よく動く私たち。
途中でカメラの視界の外へはみ出るほど。

私が彼を投げると、体重が重い彼は遠くに転がっていってしまい、追いかけて技をかけなければいけない。
彼も、私が軽すぎて遠くに投げてしまい、それを追って移動する。
そのため、お互いに、かなりの体力を消耗してしまっているようでした。

夫は、無言で審査に見入っています。
まるで、審査に同席しているような険しい表情。

終盤の「座技呼吸投げ」になると、双方に殺気がみなぎっていて、合気道の理想とする「調和」の対極、まさに「力と力の激突」になってしまっています。

「うわぁ。こりゃ、師範、怒りはるわけやなあ。確かに、これは合気道やない」

思わず両手で顔をおおう私……。

DVDの再生が終わると、夫は真面目な顔で言いました。 

「お前の動き、大東流みたいや。直線的で。相手は相手で、柔道みたいに腰引いて、体重かけて力ずくで投げとるし。……こりゃ、合気道とちゃうわ。大東流と柔道の勝負や」

そうか。私の動き、映画『AIKI』で見た大東流合気柔術(『AIKI』(後編)参照)に似ているんだ。
でも、なぜ???

「元々、お前は子供の時からのケンカで、空手に似た直線的な早い動きが身についてるんや。最初の入り身投げで、相当ダメージ受けとるから。審査が終わるまで持ちこたえるために、技だけ的確に決めることだけ考えて、無意識に、直線的で最小の動き、合気道らしくない動きになったんやろ。相手も投げにくそうに投げとる。緊張と体力の消耗で、両方とも追い込まれて、途中で、自分が動きやすい本来の動きになったんやろな。合気道の審査やったら、あかんことやねんけど。……そやけど、この組み合わせそのもんが無茶やし」

夫は眉をひそめました。
「体重差が倍近くある」……空手や柔道の試合には、体重別の階級分けがあって、極端に体重差のある組み合わせはしないんだそうです。
合気道でも、普通なら、体格を考慮して審査の組み合わせを決めるのですが、この時の受験者が、私と柔道整復師の若者しかいなかったので、この組み合わせになったのです。

「合気道やのに、柔道と大東流みたいな演武やろ。師範が怒りはるのも、もっともや」
「それは、深く反省しております」

夫は厳しい表情を見せました。

「お前の動き、まだ、体の中心軸が不安定になる時がある。もっと、体の転換や八方、基礎の足さばき、稽古せんといかん。それから、できるだけ、柔らかく、ゆっくり動くように心がけることや。もちろん、実戦用の早い動きも必要やねんけど、その切り替え方は、自分で工夫せんといかん」

やっぱり「罰として体の転換500回」か。
予感は当たらずとも遠からずだ。

夫は表情をゆるめました。

「まあ、しかし、俺は、もっとメチャメチャなもん、見せられるんかと思うとったんやが、喘息持ちで、この悪条件では、ようやった方やと思う。これからも、基礎やらなあかんで」
「わかってる」

結局、叱られはしませんでしたが……。
やっぱりDVDを見てよかったと思います。
今回は、とんでもないリクエストをしてくれた後輩に感謝。
タグ:合気道 武道
posted by ゆか at 15:12| Comment(2) | TrackBack(0) | 武道系コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
厳しい条件の中での審査だったのですね。
御主人がどのように評価するのか気になっていましたが、アドバイスとねぎらいの言葉と、やはり頼もしいですね。
私も毎回動画を撮影していますが、人にはみせられないなと何時も思ってますので気持ちは同じです。
Posted by やまま at 2008年04月15日 17:01
叱られなくてよかったですね。(笑)
初段の審査で上手く出来たのを、僕も見たことがありません。
自分もグダグダだった記憶があります。
しかし、自分で思ってたよりも映像のほうがマシだったんじゃないでしょうか。
何度も見返して、ここはこうすべきだったとかそこはこう動くべきだったとか考えるのも、よい勉強になると思います。
きっと二段の審査は、バッチシですよ。
Posted by 澤増ハジメ at 2008年04月15日 17:28
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