斎藤師範が編み出された「13の杖」「31の杖」の映像資料。
足さばきについての詳細な説明はあるのですが、残念ながら、手……杖を振り回す時の、手の持ちかえ方を拡大した詳細な映像がないのです。
……どうしたらいいんだろう……
一緒に斎藤師範のビデオを見た夫(空手4段剣道3段少林寺拳法3段大東流合気柔術2段柔道初段)からは、「十三型、三十一型が一通りできたら、それを左右逆にした逆十三型、逆三十一型もやっとけよ」と宿題を出されています。
前に剣の持ち方を教わった時、夫は言いました。
「完全に右で素振りができた後は、実戦に備えて、左構えもできるようにしておけ。そやけど、お前は左利きやから、右の方を意識して、重点的に練習せんとあかんで」
実戦では「技の数を多く持つ者の方が有利」だからです。
今のところ、十三型でも怪しい箇所があるので、「三十一型」「逆十三型」「逆三十一型」までは、まだまだ遠い道のり。
合気道から消えかけている杖の技法。
上達の手がかりがなかなかないのです。
しかし、まったくヒントがないわけでもありません。
その鍵を握るのは……杖道。
江戸時代初期、宮本武蔵を破った夢想権之助勝吉を流祖とする「神道夢想流杖術」。
これをもとに清水隆次氏、乙藤市蔵氏が型を制定したのが杖道。
合気道の杖取り技が「素手対杖」なのに対し、杖道は「剣対杖」。
二人一組で、一方が杖、一方が木刀を構えて稽古します。
杖の使い方は若干違うものの、杖の握り方や手の返しなどは、まったく同じ長さの杖を使っているので同じ。
「合気道が剣の型からできたものなら、実際に剣を持つと、合気道が上達するかもしれない」と考えた熱心な合気道家が、居合道や古流剣術をはじめる。
その一方で、「もっと杖を持てば、合気杖が上達し、合気道への理解が深まるかもしれない」と考えた情熱的な合気道家が、杖道をはじめることがあるのです。
普段、豊中市内の支部道場で合気道を指導されている●●師範(6段)も、その一人。
昔は熱心に杖道の稽古をされたとのこと。
道場に稽古に来られた時、後稽古で、みんなに杖を教えてくださることになりました。
「杖」と聞けば、黙っていられない私も参加。
白帯青年や外国人白帯、英信流居合道の使い手の若者、柳生新陰流剣術の使い手の幻之介さん(『心眼』(前編)などで活躍)、2段、3段の有段者たちも集まりました。
集まった20人ほどの門下生を前に、●●師範はおっしゃいました。
「まず、最初に言っておきたいことは、杖道の杖さばきと、我々合気道の杖、合気杖は、同じものではありません。しかし、杖の扱い方、構え、手の返しなどは、参考になると思います。それを承知でご参加ください」
全員が無言で大きくうなずきました。
私たちが稽古するのは杖道・基本十二本。
本手打(ほんてうち)、逆手打(ぎゃくてうち)、引落打(ひきおとしうち)、返し突(かえしづき)、逆手突(ぎゃくてづき)、巻落(まきおとし)、繰付(くりつけ)、繰放(くりはなし)、体当(たいあたり)、突外打(つきはずしうち)、胴払打(どうばらいうち)、体外打(たいはずしうち)。
「まず、今日は最初の3つ。本手打、逆手打、引落打です。合気杖とは違って、杖道には左右、両方の打ち型があります」
実は、十三型、三十一型には、左右どちらか片方しか動作をしない型が多く、「右しかない型を、左手でやったら、どんな風になるんだろう?」と考え込んだりしたのですが、杖道は左右対称なので、その点はわかりやすい。
以前、ケーブルテレビで、大阪市内の杖道場の特集番組を見たことがあります。
木刀を持った袴姿の相手に、袴姿の杖を持った人々が、号令を元に、一斉に杖で「1、2!1、2!」のリズムで打ちかかっていたのが印象的でした。
合気道の杖は、いくつかの型が一連の動作で、流れるように動く……同じ杖を使っているけれども、かなり違う武道です。
意外なほど、2段3段の有段者の参加が多かったので、初段の私は遠慮して、道場の隅の方で稽古に参加していたのですが……。
「ほらほら。君は不器用なんだから、一番前に行って」
年配の有段者たちに追い立てられて、一番後ろにいた私は、なぜか最前列へ。
「では、杖を右に構えて」と●●師範がおっしゃっているのに、いきなり利き手の左で構えてしまう間抜けな私。
「ははは。君は、ぎっちょかい? 最初大変だろうけど、じっくり稽古したら大丈夫だよ」
日に焼けた顔をほころばせる●●師範。
私は恥ずかしくていたたまれない気分でした。
それでも、なんとか悪戦苦闘で杖を振り……第1回目の杖道講習が終了。
これから●●師範が道場に来られるたびに、3つずつ、後稽古で杖道の型を稽古することになりました。
杖の稽古が終わった後、帰り道で、英信流居合道の使い手の若者(『抜刀術』(後編)などで活躍。この春2段に昇段)と一緒になりました。
「杖道の稽古……面白いことになったね。これからが楽しみです」
私が話しかけると、若者は、にやりと笑い、声をひそめて言いました。
「実は僕が、春の合同稽古の時に、●●師範にお願いしたんです。そうでもしないと、なかなか正確に杖を覚えられないですからね」
●●師範は、たまにしか道場に来られないので、「資料として、みんなで見るように」と道場に置いていかれた『神道夢想流 杖道教範(神道夢想流杖術25代師範・清水隆次監修・日貿出版社)』のコピー。
古い本ですが、12本の杖の型が、1つずつ分解写真で載っていて、説明もついているので助かります。
さっそくコピーしました。
合気杖の稽古……「技の伝承の難しさ」を、今更ながら痛感させられるものです。
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2008年05月13日
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初めてコメントさせていただきます。
結構前の記事ですので、今更かと思われるかもしれませんが、自分は合気道で斉藤先生の流れをくむ“岩間流”を学んでいる者です。
まだ初段なので未熟者且つ若輩者ですが、手の持ち替え等についてでしたら、お答え出来ると思います。
合気道の杖にも当然、三十一之杖を学ぶ以前に習得しなくてはならない基本素振りが多々あり、斉藤先生の書かれた本にも、
『三十一之杖までに素振り二年』
と、書いてあるほどこれらは密接に関わり合っています。
もし、合気道の杖の基本素振りの型をご存知でしたら、文章での説明もかなり簡略されるのですが……。
また、既にご存じとは思いますが、この型は“組杖”ですので、最終的な習得には相手が必要になります。
組杖になりますと基本の型とは大きくずれる場面も多く、どなたかと協力して覚えなくてはいけなくなると思います。
突然のコメント、失礼いたしました。