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2008年06月03日

昨今の筆箱

 mixi『文房具』コミュニティ(掲示板)に、「卒論のテーマで「筆箱」をとりあげることにしました。皆さんは小学校時代にどんな筆箱を使われていましたか?」という質問が書き込まれました。

他のコミュニティで、こんな質問をすると、「安易に人に頼ってレポートを書くなよな!」というような書き込みがあって、無視されることが多いのですが、『文房具』コミュニティに参加者は「よい人」が多いのか、皆さん、ご自分の筆箱の話を素直に語られますね。

マグネット式2段ビニール筆箱、キティちゃんなどのキャラクター物、缶ペンケース、布ポーチ……。
懐かしい筆箱の話がたくさん出てきて、なかなか楽しい。
そして、やっぱり出てきました。
「象が踏んでも壊れないアーム筆入」。

このコラムを読まれている若い方にご説明すると……。
これは昭和の後半に登場した「サンスター・アーム筆入」のCMのこと。
「象が踏んでも壊れない」のキャッチフレーズ通り、実際に象にプラスチックの筆入を踏みつけさせ、しかも、筆入はなんともない……この映像は、子供たちに衝撃を与えました。

当時、この筆入は大流行。
全国各地で大勢の子供たちが、この筆入を実際に踏みつけたものです。
私がいた小学校でも、男子がアーム筆入を床に置いて、椅子の上から飛び降りたところ……見事にグシャグシャに。

しかし、こういうことがあっても「誇大広告!虚偽記載!」の問題が起きなかったので、その当時……昭和半ばは、今考えると「のんきな時代」でした。

『頑張る日本の文房具』(シリーズ知・静・遊・具編集部編 ロコモーションパブリッシング)によると、「象が踏んでも壊れないアーム筆入」は、その後、改良されて「NEWアーム筆入」として、今も現役の商品。

20平方センチメートルあたり1.5トンの重量に耐えられる、半透明のポリカーボネイト製。
上蓋の端を押すと逆の端が持ち上がるプッシュアップ式上蓋。
鉛筆を入れやすい仕切りつきの中皿がついた2段式の筆箱。
日本PTA全国協議会推薦商品。
ブルーとレッドがあって、お値段840円。そんなに高くないなあ。 

ちなみに、この本には『時代を語る文房具テレビCM大集合』コーナーもあります。
大橋巨泉の「ハッパフミフミ(パイロット萬年筆・1969年放映)」。
「水に溶けるスパイメモ(サンスター文具・1970年放映)」。
「アロンアルファはバイクも止めた!(コニシ・1985年放映)」。
……そして、ありました。
「象が踏んでも壊れない!アーム筆入(サンスター文具)」……1967年放映? ずいぶん前から放映されていたんですね。

『サンスター文具』サイトによると、アーム筆入は1965(昭和40)年発売。CM放映は1967年開始。
販売数500万本の大ヒット商品になりましたが、バブル期には売り上げ低下。
しかし、現在ではエコロジーの視点から、長く使えるアーム筆入は再び脚光をあび、大阪・追手門学院小学校では、学校指定教材として全校生徒が使っているそうです。

今時の私学では、「子供の情操教育に上質な文具を」ということで、シンプルなペンケースを指定教材にすることが多いそうなのですが……。
子供って、派手な色彩やキラキラ光るものや、キャラクターのついたものが、どうしても好きなんですよね。

良質な文具は、そのよさがわかるまで、ある程度の年数と経験が必要ですから。
とびきり上質の文具を使うのは「大人になってからお楽しみ」として、とっておいてもいいような気がしますが。

さて、子供の頃、筆入を踏みつけていた世代が、大人になって、どんな筆箱……正確にはペンケースですね……を使っているかというと……。

まず、「筆箱を使うことが、あまりない人」がいます。
私もそうですね。
アルミのシンプルなペンケースは持っているけれど、なかなか出番がない。
ロディアのカバーやライティングパッドや手帳カバーに、ペンホルダーがついていて、つい、そこにペンや鉛筆をとりつけてしまうので、ペンケース本体を持ち歩くことが、ほとんどないですね。

むしろ、洗面所の無印良品ポリプロピレン・ペンケース平型(化粧道具のアイシャドウや頬紅、アイペンシルや紅筆収納に便利)の方が大活躍。
化粧道具も文具も「線を描く、色を塗る」用途に使われるので、形やサイズが似ていますから。

「筆箱使わない派」がいる一方、色とりどりのペンや消しゴム、定規類を、たくさんペンケースに詰め込む人も。
小さめの化粧ポーチを、ペンケースに転用する女性もいて楽しそう。

私も昔、布のペンケースを使っていましたが、ケースの中が鉛筆で黒く汚れるので、拭きやすいアルミ缶に……しまった! 鉛筆キャップをつければよかったんだ!

さらに、「上質の革製一本差しのペンケースに、お気に入りの万年筆」という人も。
以前、万年筆(『筆圧矯正文具?』参照)について調べた時に、「愛用の万年筆を保護するために専用ケースが必要」と知りました。
今まで「一本しか入れられへんペンケースって、何するもん?」と不思議だったのですが。
なるほど。万年筆は、とてもデリケートな筆記具なのですね。

そして、最近人気なのが「巻物状ペンケース」。
革や布にペンを1本ずつ差すホルダーが、いくつかついていて、そこにペンを差し込んでクルクル巻き、紐で結んだり、ボタンでとめたりするタイプ。
これなら、ペン同士がケースの中でぶつかって、傷つくことがない。
……でも、消しゴムとか、定規とか、鉛筆削りとか、クリップとかは入れられないなあ。

まだ、小学校時代の筆箱の中身が基準で、大人になっても、それが頭から抜けない私。
実は、アルミのペンケースの中も鉛筆、消しゴム、ボールペン(赤・黒)、定規、鉛筆削り、シャープペンシル……学生時代から全然進歩していませんね。いかんなあ。

「筆箱」……私が子供だったころ、すでに「筆」は入っていませんでしたが。
筆記具の機能の進歩、高級化とともに、これからも色々なタイプの「ペンケース」が出てくるのでしょう。
なかなか楽しみな文具ですが、意外に、持つ人の思想信条趣味嗜好性癖が、はっきり現われてしまう、侮れないものですね。 
ラベル:ペンケース
posted by ゆか at 13:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 文具コラム | 更新情報をチェックする
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