すでに5月8日から募集がはじまっていますが、どうやら、今年のグッドデザイン賞は「激変」しそうな予感。
2007年11月1日に『グッドデザイン賞主催者公式ウェブログ』が突然の休止。
とても残念でしたが、2008年4月1日、『グッドデザイン賞公式ブログ』として再開。
『本日4月1日より、2008年度グッドデザイン賞をスタートしました。今年のグッドデザイン賞は、応募されるデザインと、ユーザーや社会をより近づけることを目指し、様々な事業再編を行います』
……ふうん。なるほどね。
公式ブログは以前と同じように、グッドデザイン賞やデザイン関連情報を掲載しているのですが、来訪者の反応は薄く、4月1日から6月5日まででコメント3件、トラックバック2件。
……休止前はトラックバックやコメントであふれていたのに。さびしいですね。
もしかしたら、この数年、一般消費者にとって、グッドデザイン賞は、わかりにくいものになりはじめているのではないでしょうか。
私は「良質で機能のすぐれた美しいものが、たくさんあって、それを消費者が自由に選べることは、すばらしい」と考えているので、「Gマークのまわし者(グッドデザイン・モニター)」をしているのですが……。
『私の選んだ一品7 鼠の巻(日本産業デザイン振興会編・阪急コミュニケーションズ)』。
グッドデザイン賞選考委員(著名な建築家やデザイナーなど)が、その年の自分が特に気に入ったグッドデザインを一人一品ずつ選んで語るもの。
毎年1冊刊行される本で、今年で7冊目ですが、今年の本を読んでいると、「誰のためのグッドデザイン賞?」と不安になってきました。
選考委員が選んだ品物や活動が、いかに優れているかを熱く語ってはいるのですが、「それをどう普及させるか」の提言が出てこないのです。
例えば、2007年グッドデザイン賞大賞商品「エネループ・ユニバース・プロダクツ」。
驚異的な寿命を誇る充電地「eneloop(『eneloopの挑戦』参照)」と、太陽光発電ユニット、充電式カイロなどをセットしたもの。
たくさんの消費者が買えば、廃棄乾電池が減り、資源の節約や二酸化炭素の削減にもつながる。
……これはわかりやすい。
一方、新領域デザイン部門金賞の「完全密閉型植物工場システム」。
独立行政法人産業技術総合研究所の応募作品。
ワクチンなどの医療用物質生産用に開発された遺伝子組換え植物を、外界から隔離した完全人工環境で栽培し、医薬品原材料の抽出・精製までの工程を同一施設内で行う植物工場システム。
植物バイオ研究、遺伝子拡散防止安全技術、次世代型製薬システム、高効率な野菜工場システムの開発を、一つの施設で行なう世界初の画期的な研究施設。
『遺伝子改変に関わる知財の開発とアプリケーションの検討は、国策として急務であり、進行する温暖化がもたらす食料リスクへの技術的ソリューションの提案も、これから増大する地球的課題への対応で、農林水産ゲノム知財の多くを保有する日本にとって、国際貢献と国際ビジネスの最重要な選択肢である。持続可能な食ビジネスへの展開、検査、診断を超えた治療技術への展開を促す意味でも、これから望まれる優れたリサーチデザインのモデルとして、社会的インパクトのある優れた提案といえる』。
……選考委員の赤池学氏のおっしゃることはわかるのですが。
この施設を普及させるには、企業だけでなく、国や自治体の長期的な協力が必要でしょう。
一般消費者は何もできないような気もしますが。
それにしても、こういうものは選びっ放しでいいのでしょうか?
個人的に、最先端技術の「新領域部門」に選ばれたものが、その後どうなっていくのか、興味があるのですが。
グッドデザイン賞は1957年に誕生。
毎年「デザインが優れたものごと」を選び、生活者や産業などに働きかけ、社会をより豊かな方向へ導く活動。
(詳細は『グッドデザイン賞と新日本様式』)。
選定商品は50年間で30000件以上。
2005年8月のインターネット調査では、Gマークの認知度は86%。
「良いデザインとして選ばれた証のマーク」と知っている人は66%。
高い浸透率です。
ちなみに、今年のグッドデザイン賞審査方針は、「近未来の生活者目線」。
審査委員が 「少し未来の生活者」の立場で審査し、生活者・社会へ「よいデザイン」を選ぶ指針を、生産者・提供者へ「次の時代のニーズ」を読み取る材料を提供。
……うーむ。消費者と選考委員の想像する「近未来の生活者」像は、それほどかけ離れたものなんでしょうかね?
「環境・人に優しい持続可能で豊かな社会」は、消費者も望んでいるはずですが。
さて、今年は、審査方針の変更とともに、賞の内容も、すこし変わりました。
商品デザイン部門、建築・環境デザイン部門、コミュニケーションデザイン部門、新領域デザイン部門など、これまでの部門賞を、「身体・生活領域」「産業・社会領域」「移動・ネットワーク領域」、実験的試みを評価する「新領域」の4つの領域編成に。
審査部門ごとに細分化させていた応募ルールなども一元化。
……最近、ネット上のものや、ゲームなど、部門別ではおさまりきれない応募作品もふえてきましたからね。
ユニバーサルデザイン賞、エコロジーデザイン賞、インタラクションデザイン賞の3つあった「テーマ賞」を改訂。
「持続可能な社会の実現」をテーマにした「サステナブルデザイン賞」を制定。
……どんなものが受賞するのか、全然想像がつきません。
ロングライフデザイン賞は、「グッドデザイン賞受賞から10年経った商品」の条件がなくなり、「10年以上、継続的に生産販売されている商品」
「10年以上にわたり、同一の商品コンセプトが継承されている商品」
「10年以上前に生産販売された商品を、再度改めて生産販売している商品」に。
これは誰でも推薦することができるようになりました。
該当商品を使っている人が「商品名・写真・推薦文」を、メールなどで、特設ケータイサイトや事務局に送ればいいそうです。
ちょっと楽しみですね。
『今年は大きく模様替えをしました。審査領域を整理し、時代の要求に合わせて再編成しました。それでも大切なことは変わりません。デザインは多くの人の生活を支え、豊かなものにし、社会を明るくします。やはり人間中心なのです。未来のためにあるのです。「近未来のディマンドサイド」に立ちたい。それが再編に当ってのメッセージです。グッドデザイン賞は、今まで以上に刺激的で活性度の高い場造りを、デザインの審査を通して目指します』。
……グッドデザイン賞選考委員長内藤廣氏のメッセージ。
デザイン……英語では「設計」。
半世紀続いたグッドデザイン賞も、試行錯誤の時期に入ったと言えるでしょう。
なお、今年のグッドデザイン賞は10月8日発表。楽しみです。
ラベル:グッドデザイン賞