時代劇でも町人もの流行りだが、登場人物の固有の事情ばかりがクローズアップされていて、「江戸商人」の全体像が見えにくい。
自分が江戸時代以降連綿と続く資産運用術「株取引」をやっているので、「昔の人はどんなところで苦労してたんだろう」と気になってきたのだ。
この本の著者は『江戸の衣装と暮らし解剖図鑑』で知られる江戸の衣装と暮らし研究家。
話のベースは三井グループの基礎を作った江戸時代の豪商・三井高房が書いた「町人考見録」。
京都の四十数軒の豪商の繁栄や没落例を記した三井家の家訓書である。
著者が文とイラストの両方を手掛けているが、元衣装デザイナーだけに人物イラストの色彩が時代考証通りで、しかも構図が美しくてかわいい。
江戸時代の絵師・耳鳥斎(じちょうさい)や安藤広重を思わせる「江戸のゆるキャラ」たちの姿がカラーでちりばめられている。
そのどれもが江戸時代に豊富に出回っていた商人向けの読本から著者が再現したものだ。
江戸時代の風俗を忠実に再現したイラストだから、時々よくわからないものが描かれている。
「これは何?」と思った箇所には、矢印がつけられていて、きちんと解説してくれているので安心して読める。
「豪商として成功した人々」「没落していく豪商」「豪商や奉公人の暮らし」と、様々な角度から「商人の浮き沈み」を描いている本だが、特に気に入ったのは後半部分。
色鮮やかな歌舞伎や物見遊山の様子が描かれた「商家の贅沢な暮らしと粋な趣味」と、漫画風のタッチで思わず笑った「商家の奉公人の暮らしとしくじり噺」。
商家には主人・女将・長男・新妻とそれぞれの役割が決まっていて、手代も丁稚も女中も下男も、それぞれに仕事が大変だ。
大変だからこそ、江戸時代は芝居見物や祭礼が派手になっていったのかもしれない。
江戸時代も現代も、人のやることはあんまり変わっていないなあ……
かわいいイラストに癒されながら、ふとそんなことを思った。
『江戸商い解剖図鑑』 菊池ひと美 著 エクスナレッジ
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